研究課題/領域番号 |
16K05780
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
白川 誠司 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60459865)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スルホニウム塩 / 水素結合 / 不斉合成 / 相間移動触媒 / 有機分子触媒 / グリーンケミストリー |
研究実績の概要 |
有機オニウム塩の一種であるスルホニウム塩は、古くから有用な有機合成試薬として利用されてきたものの、その触媒としての利用例は非常に限られていた。本研究では、スルホニウム塩の有する化学的特徴を基に、その潜在的な触媒としての能力を引き出すことを目的とし、研究を行っている。 まず、トリアルキルスルホニウム塩のα水素の性質に着目し、トリアルキルスルホニウム塩が水素結合供与型触媒として機能することを明らかにした。本触媒は、マンニッヒ型反応やアザディールスアルダー反応、イミンの還元反応のための有効な触媒として機能し、本触媒系を利用することで、有用な生成物が効率的に得られることを明らかにした。さらに、本触媒の機能をX線結晶構造解析やNMR実験等により明らかにした。 次に、精密有機合成を志向した、キラルトリアルキルスルホニウム塩触媒の開発に取り組んだ。様々なキラルトリアルキルスルホニウム塩触媒を合成し、その効果について詳細に検討した。スルホニウム塩部位に加え、基質認識部位としてウレア基を導入した二官能性触媒が、中性条件下での不斉相間移動反応において、有効な触媒として機能することを見出した。触媒のさらなるファインチューニングの結果、不斉共役付加反応に極めて有効なキラルトリアルキルスルホニウム塩触媒を開発することに成功した。本触媒系は、キラルトリアルキルスルホニウム塩を用いた高エナンチオ選択的反応の非常に貴重な例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である、スルホニウム塩の触媒としての利用に成功しており、研究は概ね順調に進展している。本研究に関する成果の一部を、論文として国際誌に報告している。また、学会においても発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したスルホニウム塩触媒を利用し、さらなる反応開発へと展開していく。さらに、実用化を視野に入れ、より大量スケールでの反応への適用や、触媒のリサイクル法の開発を行う。また、これまでに得られている触媒設計の知見を生かし、新たなスルホニウム塩触媒の開発にも取り組んで行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
既に研究室で所有していた試薬やガラス器具などの消耗品の有効活用により、物品費をある程度抑えることができた。次年度は、本研究のさらなる展開を図るため、当初の予定より多くの試薬の購入が必要となることが予想されるため、本年度未使用分および次年度分の予算は、主に消耗品の購入に使用する予定である。
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