研究実績の概要 |
天然には、1,2-cis-β-グリコシド結合を有する生物活性物質が数多く存在しており、その構造活性相関の解明に関する研究が精力的に行われるようになってきている。そのため現在、これら配糖体天然物および類縁体の合成的供給が強く求められている。しかし、1,2-cis-β-グリコシド結合の立体選択的な構築は、糖供与体の2位保護基による隣接基関与やアノマー効果が利用できないことから、未だ困難であり、解決すべき課題の一つである。本研究では、有機ホウ素化合物の化学的特性を活用したβ-マンノシドを含む1,2-cis-β-グリコシドの位置及び立体選択的グリコシル化反応の開発と配糖体天然物合成への応用を目的として行った。本研究の2年目は、具体的に以下の研究を行い、成果を得た。
1、4-ニトロフェニルボロン酸触媒を用いた、1,2-アンヒドロマンノースと無保護糖受容体とのグリコシル化反応が水共存下、高収率かつ位置及びβ立体選択的に進行することを見出し、本反応のさらなる有用性を明らかにすることに成功した。
2、本研究の初年度に開発したボリン酸触媒を用いたβ-マンノシル化反応を鍵反応とした天然糖脂質マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)類の全合成と抗菌活性に関する構造活性相関研究を行った。その結果、マンノースの4位および6位のアセチル基の数と位置が異なる4種類のMEL-A,B,C,およびDの構造を有し、かつマンノース2位および3位の脂肪鎖の長さ(n = 5, 7, 9, 11, および13)が種々異なる計20種類のMEL類の全合成を達成した。さらに、合成したMEL類の各種菌に対する抗菌活性を評価した結果、MEL類の抗菌活性の発現には、脂肪鎖長が深く関与し、ある種のMELがバンコマイシン耐性菌を含むグラム陽性菌に対して高い抗菌活性を示すことを初めて見出した。
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