研究課題/領域番号 |
16K05783
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
松田 学則 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (80359778)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロジウム / スピロ化合物 / ナフタレン / 炭素-炭素結合切断 / シクロブタノール / 骨格転位 / 触媒 |
研究実績の概要 |
ベンゾスピロ[3.3]ヘプタン類のロジウム触媒による連続的な2回の炭素-炭素結合切断を経るナフタレン誘導体への骨格転位反応を開発した。ベンゼン縮環2-(2-ピリジルメチレン)スピロ[3.3]ヘプタンの場合、Wilkinson触媒存在下、p-キシレン中、150°Cでの加熱により、ピリジン配向基によりアシストされたC-C酸化的付加による5員環ロダサイクルの生成、続くβ炭素脱離による7員環ロダサイクルの生成、還元的脱離、および二重結合の異性化による芳香化が起こり、1-メチル-3-(2-ピリジルメチル)ナフタレンを90%収率で与えた。この反応において、2回目のベンゾシクロブテン部位でのC-C結合切断はdistal位で選択的に起こっている。ベンジル位にメチル基を導入した基質で同様の条件下反応させたところ、反応性が低下し、distal位の切断による生成物が13%、proximal位の切断による生成物が10%収率でそれぞれ得られた。一方、ベンゼン縮環2-フェニルスピロ[3.3]ヘプタン-2-オールを触媒量の[Rh(OH)(cod)]2存在下、p-キシレン中、150°Cで加熱した後、シリカゲル処理をしたところ、3-メチル-1-フェニルナフタレンが54%、α,β-不飽和ケトンが29%収率でそれぞれ得られてきた。前者の生成物はproximal位で、後者の生成物はdistal位でそれぞれ2回目の炭素-炭素結合切断が起こっている。原料基質のベンジル位への置換基導入により、distal位での切断が不利になることがわかっているので、ベンジル位にメチル基、エチル基などを導入したベンゼン縮環スピロ[3.3]ヘプタン-2-オールを用いて反応を行なったところ、α,β-不飽和ケトンの副生を完全に抑えることができ、目的とする置換ナフタレンを56-62%収率で得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度研究実施計画にあったスピロ[3.3]heptane誘導体のロジウム触媒骨格転位反応については完了した。(2-ピリジルメチレン)シクロブタンのカルボニル化については順調に進んでおり、あと2ヶ月程度で終了する予定である。(2-ピリジルメチレン)シクロブテンのカルボニル化についても同様である。また、パラジウム触媒によるシクロブテノールとアリールハライドの開環カップリング反応についても論文投稿に必要なデータはほぼ揃えることができている。シクロプロペノンとアルデヒドの[3+2]型環化反応についても少しずつではあるが進展はしており、引き続いて検討を行う予定である。ただ、【研究実績の概要】に書かれた反応以外のスピロ化合物の連続的結合切断反応の開発には苦戦している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度研究実施計画にあるビシクロアルカン構造を持つ遷移金属シクロブタノラートからのベータ炭素脱離を経る反応について引き続き検討を行う。また、パラジウム触媒によるシクロブテノールとアリールハライドの開環カップリング反応における基質適用範囲の検討中に予想とは異なる分子内酸化的結合生成反応を見出したため、この反応の一般性に関する検討を行う。また、トロポン誘導体からビシクロ[5.3.0]デカン誘導体、具体的には1-アザアズレンを生成する触媒反応を見出しており、これについても詳細に検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用した。生じた余りは1%程度で問題ない。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度に問題なく使用される額である。
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