研究実績の概要 |
(1)(2-ピリジルメチレン)シクロブタンのRh触媒による炭素-炭素結合の切断を伴うカルボニル化反応を開発した。ピリジル基の分子内配向によりシクロブタンC1-C2結合がRhに酸化的付加し、生じたロダサイクルに対するCO挿入、続く還元的脱離により2-(2-ピリジルメチレン)シクロペンタノンおよびその異性体を与えるものである。少なくとも一つのアリール基を有する1,1-二置換-3-(2-ピリジルメチレン)シクロブタンにおいては、Rh(I)-DPPBZ触媒存在下で効率的に反応が進行した。一方、1,1-ジアルキルシクロブタンおよびモノ置換体の反応はRh(acac)(CO)2を用いた場合に良好な収率で生成物を与えた。 (2)シクロブテノールのPd触媒による開環アリール化反応を開発した。Pd(0)-XPhos触媒および炭酸銀(I)存在下、トルエン中、65 °Cにおいて、tert-シクロブテノールと臭化アリールの開環カップリング反応が進行し、γ-アリール-β,γ-不飽和ケトンを30-79%収率で与えた。本反応は、パラジウム(II)シクロブテノラートのβ炭素脱離による開環を経て、鎖状ケトンを与えている。オルト位にCHO基、CN基を有するヨウ化ベンゼンを用いた場合は、開環カップリング後に分子内縮合が進行し、2-アシルナフタレンを与えた。 (3)シクロプロペノンとN-(ピバロイルオキシ)アミドの塩基を触媒とする形式的な[3+3]型環化反応を開発した。触媒量の炭酸カリウム存在下、THF中、60 °Cという温和な条件で、N-(ピバロイルオキシ)アミドを1,3-N,O-双極子とする[3+3]型環化反応が進行し、2,4,5-三置換-1,3-オキサジン-6-オンを最高99%収率で与えた。この反応は、N-(ベンゾイルイミノ)ピリジニウムイリドを用いる従来法と比べて極めて有効な合成手法である。
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