遷移金属触媒を用いた物質生産プロセスは、グリーンケミストリーの観点から特に有効な手段であり、我が国のファインケミカルズ製造における重要な基幹生産技術に位置づけられる。その代表例として、遷移金属触媒を用いたクロスカップリング法による炭素-炭素結合ならびに炭素ヘテロ元素結合生成反応が挙げられ、国内外の多くの合成化学研究者によって高機能材料、医薬品等様々な物質製造における合成ツールとして利用され、活発に研究が行われている。 しかしながら、これまでに開発されている金属触媒を用いる有機変換プロセスの多くは、パラジウム、ロジウム等の稀少貴金属触媒を比較的大量に用いる必要があり、これら稀少貴金属に替わる汎用金属の高活性化を基軸とした触媒有機化学プロセスの開発が強く望まれている。 上記に示す問題点を解決すべく、簡便でクリーンな手法での安定かつ高活性な低原子価ニオブ種の合成法の確立と、それらを用いた、高度合成触媒化技術の開発を行うべく本研究を遂行した。 本年度は、低原子価ニオブ上にカルベン部位を導入することにより、新規ニオブカルベン錯体を合成し、高活性オレフィンメタセシス反応の触媒として利用することに成功した。 特に本研究においては、反応系中でニオブカルベン種を簡便に発生させることにより、閉環メタセシスにおいて高活性触媒として機能することを見出した。 これらの反応を達成することによって、低原子価ニオブ錯体が社会的ニーズの高い高難度かつ実用的な有機変換反応プロセス開発研究において有効な触媒ツールとして組み込むことを達成した。
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