研究課題
リビングラジカル重合 (制御ラジカル重合) の開発により、ビニルポリマーの特殊構造化・多様化が急激に進められてきた。しかし、ビニルモノマーの環拡大重合は開発が著しく遅延していた。この状況は、環拡大制御ラジカル重合で得られる生成物の構造解析が難しく、系の実体が明示されていないことが関与していると考えた。本研究では、ビニルモノマーの環拡大制御ラジカル重合に関する研究を実施した。制御ラジカル重合開始剤として環状アルコキシアミンを用いたビニルモノマーの重合では、環拡大ビニル重合が進行し、環状ポリマーが生成することを原子間力顕微鏡 (AFM) 観察により明確に示した。また、ラジカル環交差反応が併発すること、生成した環状ポリマーが開裂し鎖状ポリマーも生じることも明らかとなった。以上のように、これまで不明とされてきた系の実体に関する様々な知見が得られた。最終年度は、ビニルモノマーの環拡大制御ラジカル重合を行い、重合生成物をポリマーブラシに変換し、顕微鏡で観察した。この可視化プロセスを構築し、系のメカニズムを明確に示した。また、ビニルモノマーを加えずに環状開始剤のみを加熱し、生成物をさらに加熱していく一連のモデル反応を実施した。環融合反応、環収縮反応、二度目の環融合反応が進行することを示した。このような現象は、非環状NMPでは起こらず、開始剤の環状モルフォロジーに起因する特徴的な現象であることを実証した。
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Polymers
巻: 10 ページ: 638-648
https://doi.org/10.3390/polym10060638