研究課題/領域番号 |
16K05797
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
飯田 拡基 島根大学, 総合理工学研究科, 准教授 (30464150)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リボフラビン / フラビニウム塩 / 有機分子触媒 / 超分子触媒 |
研究実績の概要 |
天然由来のリボフラビン(ビタミンB2)を出発物質として用い、その修飾法を駆使することにより3種類の異なるフラビニウム塩である5-エチルイソアロキサジニウム塩、5-エチルアロキサジニウム塩、1,10-エチレン架橋型アロキサジニウム塩を簡便に合成できることを見出した。これらはいずれも有機分子触媒能や分子認識能を示し、機能性材料の活性中心として利用できることが明らかとなった。 また、1,10-エチレン架橋型アロキサジニウム塩とヨウ素を触媒量用いると、N-トシルヒドラゾンと硫黄の酸化的1,2,3-チアジアゾール環形成反応が進行することを見出した。エチレン架橋型アロキサジニウム塩触媒の分子状酸素活性化能を利用することにより、本反応では理想的酸化剤とされる分子状酸素を末端酸化剤として用い、その他の犠牲還元剤や酸化剤を必要としないクリーンな反応系が構築できた。 さらに、豊富に産出される天然高分子であるキチンに着目し、キチン側鎖にアニオン性官能基を付加させた硫酸化キチン誘導体を合成した。この硫酸アニオン部位のカウンターカチオンとして、有機分子触媒能を有するアロキサジニウムカチオンをイオン間相互作用により会合させ、硫酸化キチン-アロキサジニウム錯体を形成させることにより、新規な超分子触媒を合成することに成功した。得られた超分子触媒は有機溶媒中で不均一系触媒として働き、種々の酸化反応に良好な触媒活性を示すとともに、繰り返し再利用できることも明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、多様なフラビン誘導体や超分子・高分子の合成を目的として研究を行った。その結果、新規なリボフラビン含有超分子・高分子群を合成することに成功し、それらが発現する特異な機能や特性の一端が明らかとなった。これらはいずれも次年度以降の飛躍的展開に繋がる成果であり、当初目標は十分達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
策定した研究計画に従い、次年度はこれまでに合成したリボフラビン誘導体やリボフラビン含有超分子・高分子の機能および特性の検討、応用に焦点をあてて検討を行う。なかでも前年度に見出した有機分子触媒能の展開に注力して研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、種々の有機・高分子合成や触媒反応の検討を行うにあたり、極低温反応装置などの備品の購入を予定していた。しかしながら研究の結果、予定していた反応が常温でも選択的に進行することが明らかとなった。さらに、様々な新規触媒反応が進行することを見出したため、予定していた備品購入よりも種々の消耗品の購入に充てる方が本研究目的の遂行には適当であると考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に触媒反応開発に関連する研究の進展に伴い、当初予定していた有機合成用試薬・ガラス器具・理化学機器類などの消耗品がより多く必要となる。そのため、次年度使用額をそれらの追加購入に充てる。
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