研究実績の概要 |
多種多様な機能性官能基を導入した環状分子ライブラリーから、自己集合性中空ナノ粒子群を作製し、新しい構造・物性・機能を併せもつ機能性ナノ粒子の創出を目的としている。昨年度は、環状分子群を活用した機能性ナノ粒子群の作製と動的挙動ついて、以下の研究を実施した。 (1)ピロメリット酸ジイミドとアダマンタンからなる環状分子を合成し、X線構造解析により三日月状の環状構造であることを明らかにした。ナフタレンジイミドからなる環状分子とは異なり、極性溶媒中で、球状・ネットワーク集合体などの超分子構造を経由しないで結晶が生成した。すなわち、芳香族ユニットの種類が分子集合挙動に重要な役割を果たすことが示唆された。 (2)(R,R)-1,2-シクロヘキサンジアミンまたは(S,S)-1,2-シクロヘキサンジアミンとサリチルアルデヒドを有する二置換アダマンタンからキラル環状イミンを合成した。X線構造解析により、菱形の環状構造であり、分子間相互作用によりbrick wall型のネットワーク構造を形成していた。これに対し、環状化合物のラセミ混合物からはラセミ結晶が得られた。より長軸の長い菱形構造であり、交互に配列することによりカラム構造からなるネットワーク構造であった。環状分子は極性溶媒中、球状ナノ粒子とそれらが融合した凝集体が生成し、最終的に結晶が得られた。一方、ラセミ混合物からも同様な自己集合、結晶化挙動を示したが、結晶生成速度はラセミ結晶のほうが速かった。 (3)アダマンタンを含む環状分子群の中で、極性溶媒中、球状ナノ粒子が融合したネットワーク集合体から凍結乾燥によって、より細いファイバーからなるネットワーク集合体へと形態変化する系を見出した。すなわち、極性溶媒の添加と凍結乾燥により複数の外部刺激に対応した構造・形態変化するマルチ動的システムの開発に成功した。
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