研究課題/領域番号 |
16K05804
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古川 潤一 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (30374193)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | O-結合型糖鎖 / グライコミクス / プロテオミクス / β脱離反応 |
研究実績の概要 |
O-結合型糖鎖の解析については構造非依存的に切り出す酵素がないため、糖鎖の遊離は化学手法に依存しているのが現状である。申請者が開発を進めているBEP法は、ピラゾロン共存下でβ脱離反応を行う方法であり、糖タンパク質からのO-結合型糖鎖の切断と標識を同時に行う解析法である。さらにBEP法ではβ脱離・マイケル付加反応による化学修飾法(BEMA法)と同様の作用機序で脱グリコシル化ペプチドにピラゾロン試薬をマイケル付加できるため、糖タンパク質のO-結合型糖鎖結合部位の同定に応用することが可能である。しかし、リン酸化を受けたタンパク質もβ脱離・マイケル付加反応によりピラゾロン試薬で標識されるため、グリコシル化やリン酸化を区別する手法が必要となる。 本研究では、まずプロテインフォスファターゼ処理によるリン酸基の除去について検討した。プロテインフォスファターゼによりリン酸基を加水分解した後、界面活性剤除去カラムにより精製し、MALDI-TOF MSにより確認したところ、脱リン酸化が効率的に進行していることが明らかとなった。次にO-結合型糖ペプチドおよびリン酸化ペプチドの混合物をプロテインフォスファターゼ処理を行い、続いてBEP反応を行なった結果、脱グリコシル化ペプチドが選択的にピラゾロン標識できることが明らかとなった。さらにモデル糖タンパク質を還元アルキル化処理を行い、プロテインフォスファターゼの有無によるO-結合型糖鎖に違いがないことを確認している。現在は、トリプシン消化などを行なった糖ペプチドについて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロテインフォスファターゼによるリン酸化とグリコシル化の識別については良好な結果が得られ、さらに界面活性剤の除去やペプチド同定の際に汎用されるシステインの還元アルキル化処理についても検証し、糖タンパク質の前処理法の検討までは終了している。今後は、この前処理を行なったタンパク質のエンリッチ法や糖鎖結合部位の解析について検討していく。またシアル酸の結合様式については、シアリダーゼによる選択的な切断を検討したが、ピラゾロン誘導化糖鎖では良好な結果が得られなかった。今後はラクトン化について検討することを計画している。また、選択的なアミド化法が西風らによって報告されており、O-結合型糖鎖への適用について検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、リン酸基の除去法を検討しBEP法に適用できることを明らかとしている。今後は前処理済みの糖タンパク質を使用し、トリプシンなどの酵素消化により調製された糖ペプチドを用いて糖鎖結合部位の同定を行なっていく。 さらに解析の結果を踏まえて、エンリッチ法やN-結合型糖鎖の除去などを取り入れて網羅的な糖ペプチドの解析法の開発を目指す。 もう一つの課題であるシアル酸の結合様式については、ラクトン化などの化学的修飾法について検討することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
お茶の水女子大学の三浦信明先生と研究打ち合わせを計画していたが、日程が調整できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度に糖鎖解析についての研究打ち合わせを行う際に使用する予定である。
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