研究実績の概要 |
ピラゾロン共存下でβ脱離反応(BEP法)は、O-結合型糖鎖の切断と標識、脱グリコシル化ペプチドの糖鎖結合部位へのマイケル付加を同時に行うことができる。本研究ではO-型糖タンパク質の解析法の確立を目的として、セリンおよびスレオニン残基にムチン型糖鎖が付加している糖ペプチドを用いて詳細な反応条件の検討を行った。その結果、セリン残基には糖鎖のβ脱離反応と同時にピラゾロン試薬によるマイケル付加が良好に進行する一方で、スレオニン残基は脱糖鎖後もマイケル付加反応が進行せず、デヒドロ体として検出されることが明らかとなった。またBEPによるO-結合型糖鎖の切断効率を検討したところ、セリン残基ではほとんど全てのO-結合型糖鎖の切断とピラゾロン標識が進行するが、スレオニン残基では同条件では糖鎖へのピラゾロン標識は進行するが、糖ペプチドからの糖鎖の切断が3%程度であることが判明した。そこでBEP法の塩基条件や試薬濃度を検討した結果、両アミノ酸に付加しているO-結合型糖鎖を切断できる条件を見出した。この発見は、網羅的なO-結合型糖鎖の解析へと繋がることが考えられる。 また、昨年度に引き続き、シアル酸結合様式特異的誘導体化法を詳細に検討し、分子内ラクトン環を開環と同時に直接アミド化するaminolysis-SALSA法を開発した。さらに、糖ペプチドへの適用について検討した結果、シアリル化糖鎖に含まれるα2,3-結合のシアル酸のカルボキシル基を選択的に標識する手法を開発した。
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