低侵襲的に皮下間質組織液中の血糖値をモニターできるウェアラブル光学センサの精度向上を目指した、フォトクロミズムによる応答のon/off差分検出に基づく高精度糖センシングシステムを開発することを目的とし、1)中性pH領域で光異性化するフォトクロミックゲルの開発、2)光リセット型オプティカルpHセンサの構築と差分検出に伴う測定精度向上の検証、3)グルコース酸化酵素とスピロピラン共重合フィルムに基づくオプティカルグルコースセンサの構築と測定精度の評価を行なった。 1)スピロピラン/アクリルアミド共重合フィルムは、酸性pH領域では光異性化するものの、中性pH領域では光異性化が見られない。我々は共重合に用いるモノマーの種類について詳細に検討し、ヒドロキシペンチルメタクリレート(HPMA)等の水酸基を有するモノマーを用いることにより、中性pH領域でも光異性化可能なフォトクロミックフィルムを構築できることを見出した。 2)親水性高分子フィルム中では、スピロピランはメロシアニン型で存在し、試料溶液のpHに応じてその吸収スペクトルが変化する。また、このフィルムに可視光を照射すると速やかにスピロピランに異性化し、pHに対して不感化する。そこで、このスピロピラン共重合フィルムをオプティカルpHセンサとし、バックグラウンド光強度を変動させながらpH測定を行なった結果、差分検出により応答の繰り返し精度が極めて高くなる(1/100以下の標準偏差)ことを実験的に検証した。 3)開発したフォトクロミックフィルムにグルコース酸化酵素を固定化し、これを透過性制御膜で覆ったかたちのオプティカルグルコースセンサーを構築した。このセンサは、可視光照射によりグルコースに対する応答が消失する。このセンサは、差分検出により、バックグラウンド変動をほとんど完全にキャンセルしながらグルコースを検出することが可能である。
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