研究課題/領域番号 |
16K05811
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
永谷 広久 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90346297)
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研究分担者 |
井村 久則 金沢大学, 物質化学系, 教授 (60142923)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリ-L-リシンデンドリグラフトポリマー / デンドリマー / 液液界面 / 分光電気化学 |
研究実績の概要 |
多分岐高分子の分子包接特性を利用したドラッグデリバリーシステムへの応用を考慮して、生体適合性の高いポリ-L-リシンデンドリグラフトポリマー(DGL)の分子包接特性と液液界面における反応挙動を分光電気化学的に研究した。多分岐高分子との相互作用によって蛍光強度が増強されるアニオン性蛍光プローブである8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸(ANS)を用い、水相における第2-4世代のDGL-G2-G4についてアニオン種に対する会合挙動を解析した。水相におけるDGL-ANS会合体形成に起因する蛍光強度の増強から、DGLがポリカチオン、ANSがアニオンとして存在できるpH 2からpH 10付近の広いpH領域においてDGL-ANS会合体が形成されることを確認した。会合体形成はDGLの世代にも強く依存し、高世代のDGL-G4がアニオン種とより安定に相互作用することが明らかになった。さらに、電位変調蛍光分光法による分光電気化学的解析から、液液界面における会合反応の機構を解明した。イオン移動電位のシフトから水相におけるDGLとANSの会合安定性を定量的に評価し、会合体形成によるGibbsエネルギー変化と会合定数を決定することに成功した。また、金属イオンの高感度分光検出試薬として利用するために、キレート配位子として多様な金属イオンと安定に錯形成できる水溶性8-キノリノール誘導体とカチオン性のアミノ末端ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーの会合挙動について検討し、PAMAMデンドリマーとキレート試薬の複合体の形成条件を研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子カプセルとして様々な分野で応用が進められているポリアミドアミンデンドリマーやハイパーブランチポリマーに加え、ドラッグデリバリーシステムでの活用が期待される生体適合性の高いPoly-L-Lysineデンドリグラフトポリマーについて、水溶液中および電気化学的に制御された液液界面におけるイオン性有機分子との相互作用の機構を明らかにし、成果を論文として公表した。今年度までに得られた成果により、キレート試薬の分子包接による複合化、金ナノ粒子や発光性カーボンナノドットとの複合化を通じた高感度分光検出への応用および各種薬剤分子との相互作用を利用した膜透過反応制御に必要な情報を集積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
多分岐高分子は主に静電相互作用を通じて小分子と相互作用・包接し、イオン会合体を形成することができる。液液界面では、多分岐高分子は界面電位差に依存した吸着性を示し、ゲスト分子との会合体形成・解離平衡、各化学種の親水性-疎水性に応じた相間分配を選択的に組み合わせることができる。分光検出反応系の開発では、各種キレート試薬の包接による錯形成と液液相間分配をチューニングできる高機能分離検出試薬、局在表面プラズモンを生じる金ナノ粒子に対する多分岐高分子の表面修飾を通じた高感度分光検出試薬の開発を行う。また、リン脂質単分子層を吸着させた液液界面を生体膜表面のモデル反応場として用い、薬剤分子の包接による膜透過反応制御への応用を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の変更によって支出を抑えられたため。分光電気化学計測の精度を高めるための装置改良を行う。また、これまでの成果を基に研究対象の反応系を増やし、分子包接特性と反応条件の最適化を効率的に進める。
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