研究課題/領域番号 |
16K05812
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
巽 広輔 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (60336609)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポーラログラフィー / 電気化学測定 / 液状炭素 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、液状炭素電極の組成およびキャピラリーを検討した。まず組成については、バインダー液体として低粘度流動パラフィンを用いることにより、細い流路中でも詰まらずに液状炭素を送液できるようになった。炭素粉末とバインダー液体の密度差が大きいので、時間がたつと炭素粉末の沈降が生じたが、液状炭素調製後すぐに測定すればその影響は無視できた。次にキャピラリーについては、ステンレススチール製のものを用いることにより、より炭素滴との電気的コンタクトが取りやすくなった。キャピラリーの外壁は、絶縁スプレーを用いてコーティングすることにより、ステンレススチール表面での電極反応を防ぐことができた。 ここで調製した液状炭素の比重は1に近く、水溶液中で炭素滴を脱離させるのが困難であった。そこで飽和塩化セシウム水溶液(比重約1.9)を用い、炭素滴の浮力を大きくすることにより、再現性良く炭素滴をキャピラリーから脱離させることができるようになった。 上記の電極、キャピラリー、電解質溶液を用いて、フェロセンカルボン酸のポーラログラフィーを行ったところ、明瞭な1電子酸化波を得ることができた。対数プロット解析を行ったところ、その傾きは67mVと、可逆波の理論値59mVに近い値を取った。また、限界電流の解析を行ったところ、その濃度依存性および電極流出速度依存性はイルコビッチ式におおむね従った。 以上より、液状炭素電極を用いるポーラログラフィーを行ううえでの基本的な技術的問題が解決でき、本方法で初めてほぼ可逆とみなせるポーラログラムを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液状炭素電極を用いるポーラログラフィーを行ううえでの基本的な技術的問題が解決でき、本方法で初めてほぼ可逆とみなせるポーラログラムを得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
炭素滴を強制的に脱離させる機構(いわゆるドロップノッカー)の開発を行う。それを用いてパルスポーラログラフィーを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった試薬の納品が年度末までに間に合わなかったため、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて試薬の購入費に使用する。
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