研究課題
超重元素であるラザホージウム(Rf)の化学研究を実施するためには、第一に同族元素を用いた基礎実験が重要であり、次に自動での加速器オンライン化学実験のための装置開発とその性能評価が不可欠である。今年度は、実験を立ち上げるにあたって、同族元素であるZrとHfの試料を作成して、基礎抽出実験を開始した。装置に関しては、すでに開発済みの固液抽出装置の改良と共に新たに液液抽出装置の開発にも取り組んだ。抽出実験では、今回の課題の目的のひとつとしている硝酸系の抽出においては、擬同族元素であるThの挙動との比較が重要であるため、ZrとHfだけでなく、Thの試料も作成した。そして、臭化水素酸系および硝酸系にて陰イオン抽出、および陰イオン交換実験を行った。樹脂の種類や樹脂の作成方法など様々に条件を変化させて実験を行ったが、臭化水素酸系では化学反応が遅く、短寿命のRfに適した実験条件を見つけることができなかった。一方で、硝酸系では、樹脂の調整の難しさや安定性に問題が発見され、現在改善を進めている状況である。装置開発については、固液抽出においては、基礎実験に問題が多く発見されたため、装置の大幅な改善にまでは至らなかった。ただし、液液抽出装置では非常によい成果が得られたため、年度末に実際に理化学研究所にてRf-261を核反応により合成し、抽出実験に挑戦することができた。実験の方法や収率に対する改善の必要性等、様々な課題も見つかったが、3種類の溶液条件におけるRfの抽出挙動を観測することに成功した。現在、詳細なデータ解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
初年度なので、基礎実験に主に取り組む予定であった。基礎実験では、様々な問題点や課題が見つかり、まだRfに適した実験条件の決定には至っていない。しかし、困難であるからこそ、これまでこの条件下でのRfの結果が得られていないのであり、これは想定範囲内である。対して、液液抽出の方法で、とてもよい成果が得られた。装置開発とその性能評価実験において非常に良い結果が得られ、実際にRfの実験を初年度に行うことに成功した。これは大きな成果であるため、総合的に判断して、「おおむね順調」とした。
今回、良い成果が得られた液液抽出実験に関しては、今後も解析、実験を進めていき、Rfの新しい化学挙動を明らかにしていく。今年度にもRfの実験を実施し、さらに多様な条件下での実験データをより効率よく積み重ねていく予定である。従来の計画である固液抽出に関しても、さらに基礎実験を行い、問題点の解決に努めていく計画である。特に我々の装置を用いて固液抽出反応における時間依存性を観測するには、超重元素の寿命と化学反応の早さがちょうど観測に適するような条件を見つける必要があり、多大な実験の積み重ねが要求される。地道に基礎実験を継続していくことが求めらると考えている。これと並行して装置の改良にも取り組み、計画通りRfの実験にまで到達したいと考えている。
今年度、液液抽出装置の開発は予想外に素早く成功に至った。これに関しては予定外の出費がなく成功に至っている。これに対して、固液抽出に関しては基礎実験で予想していた通りに多くの課題が見つかったが、なかなか改善にまでは至らなかった。このため、こちらの装置の改善に使用予定であった予算が使用されないまま年度を終えたため、その予算を来年度の使用額に回すことになった。
固液抽出研究の実験が少し予定よりも遅くなっているだけであるので、予算の使用に関しては、時期が遅れているだけで、内容に関しては当初の計画通りに固液抽出装置の改良、改善に主に使用していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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