研究課題
平成28年度に行った104番元素Rfの同族元素であるZr、Hf、Thの固液抽出実験により、臭化水素酸系での固液抽出は、抽出率が低く、平衡到達時間があらゆる条件下で遅かったため、Rfの実験条件としては不適当であることを結論付けた。そこで、平成29年度は、硝酸を用いた固液抽出実験を主に行った。イオン交換樹脂やAliquat336樹脂を硝酸系に調整し、樹脂濃度や溶液濃度、溶液量、振とう時間などを様々に変化させて固液抽出実験を行った。結果として、高濃度のAliquat336樹脂を用いた場合には、平衡到達時間が1~数分以下と短いことが確認できた。また、陰イオンの硝酸錯体を形成し、抽出率の高いThと、抽出率の低いZr、Hfに大きな差異が観測された。これらの元素の錯形成挙動を考察し、Rfに適した条件を決定しつつある。一方で、硫酸系の基礎実験も進めており、抽出データを蓄積している。超重元素を対象とした加速器オンライン実験用の固液抽出装置に関しては、実際にコンピューター制御で自動で動作できるところまで開発、整備を進めることができた。今後、実際に樹脂と放射性試料を用いて装置を利用した固液抽出を行い、オンライン実験の条件を決定していく予定である。さらに、28年度に液液抽出装置を利用して実際にRfの塩酸系での液液抽出実験を実現することができていた。29年度も一度理化学研究所のビームタイムを取得し、溶液濃度条件を変更してRfの液液抽出実験を実施した。Rfの化学的性質として新規の非常に興味深い挙動が観測され、学会などで報告した。これらの成果については学術論文にすべく、データ解析、考察を進めている。
2: おおむね順調に進展している
臭化水素酸系の実験は、Rfへの適用を断念したが、硝酸系、硫酸系では候補となる条件が見つかりつつある。以前に使用していた固液抽出装置の整備、改良も順調に進んでおり、さらに装置を利用した具体的な加速器オンライン実験の条件決定を進めていく予定である。固液抽出に関しては、臭化水素酸の実験条件が見つけられなかったこともあり、計画よりも若干遅れ気味ではあるが、基礎実験と装置開発、その後装置を用いた基礎実験という計画通りの行程で実験を進めている。対して、液液抽出の方では、実際に超重元素であるRfの新しい化学実験を実現しており、さらに非常に興味深い性質が観測されている。計画段階では想定していなかったが、Rfの化学研究成果としては大きなものになる可能性があると考えている。そういう意味では、計画を大きく越えて良い進行状況であるといえる。総合的に判断するととても良い進展状況であるといえる。
硝酸系、硫酸系の固液抽出実験を主としてさらに基礎実験を進めていく。固液抽出装置を用いた実験を進め、加速器オンライン実験の条件を決定していくと同時に、装置の改良も進める。実際に理化学研究所を利用した加速器オンラインのZr、Hfを用いた基礎実験を実施し、Rfのための実験準備を完了したいと考えている。その後、実際にRfの化学実験を実施するのが最終目標である。ただし、基礎実験の成果の段階で、学術論文にまとめて投稿する予定であり、並行して進めていく。液液抽出に関しては、データ解析を進め、Rfの化学的性質としての考察を深めていく。理論計算などについても計算の専門家と議論を行っている。実験としては、得られた成果で一区切りとし、学術論文の執筆を主として進めていく予定である。
次年度使用額は約2万円と少額であり、おおむね計画通りに予算施行されている。
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