研究課題/領域番号 |
16K05816
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀田 弘樹 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80397603)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 抗酸化剤 / クーロメトリー / フロー全電解 / ポリフェノール / HPLC |
研究実績の概要 |
現在のところ、抗酸化剤として作用するポリフェノールの代表例としてカフェイン酸(3,4-ジヒドロキシケイ皮酸)を取り上げ検討を進めている。第一に、クーロメトリー測定による電解酸化生成物の解析を行ってきた。抗酸化活性を評価するためには、抗酸化剤自身が酸化された後、どのような生成物を生成するのかを評価する必要がある。これまでの検討により、電解する試料溶液のpHを変化させて電解生成物の検出を行ってきた。 測定試料を、全電解が可能な電気分解セルを通したのちHPLCにて分離・検出を行った。分離にあたり、カラム(ジーエルサイエンス社製InertSustainC18)、溶離液(酢酸アンモニウム水溶液+メタノール混合溶媒によるグラジエント分離)、電解液(酢酸アンモニウム系緩衝液)、の各条件の最適化を完了した。電解直後の試料をオンラインでインジェクションポートに注入し、分離カラムに通した。この際、注入までの時間を変化させることで、酸化生成物の時間安定性の評価を行った。カフェイン酸は、酸化直後は二電子酸化体が主生成物であったが、二電子酸化体の安定性はpHに依存し、pHが高いほど副反応の進行が速くなった。pH>7では酸化数分後に10種類程度の生成物が生成した。高pHほど副反応がより速く進行するとともに、生成物の種類が多く反応が複雑になることが明らかとなった。これらの生成物は溶存酸素によりさらなる副反応を起こすことが懸念されるが、本研究では脱ガスの上、すべてオンラインで分析を行っているため、酸素による影響は無視できるものと考えられる。またフォトダイオードアレー分光光度計によりスペクトル測定を行うことで、各分画成分の吸収スペクトルを安定に得ることができた。以上の結果から得られた電子移動機構は酸化方法(電気分解、化学酸化)によりややことなると考えられるため、今後さらに検討を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初予定していた各抗酸化剤のORAC活性の取得には至らなかったが、ORAC活性データについて過去の報告をまとめることができた。電気化学測定については、フロー全電解セルの作製し、それを用いて全電解生成物をHPLCにて分離検出するシステムを完成させた。以上のことからおおむね順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度行った酸化生成物の解析について、質量分析を行い、生成物の同定を行っていく予定である。昨年度は電極酸化生成物のみの解析であったが、化学酸化による生成物の解析、すなわち、DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydradyl)ラジカルによる酸化、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)測定での酸化生成物の解析を次のように行う。 昨年度と同様にこれらの反応生成物をHPLCにかけ、分離検出を行う。電極酸化時の結果と比較して生成物の種類が異なるか、または同じであるかの判別を行うことで電気化学酸化と化学酸化の機構の違いを評価するとともに、その相関を議論する。この結果から電気化学的な抗酸化活性の評価の妥当性を検討する。 ORAC測定過程でのクーロメトリー測定を行い、抗酸化剤がORAC測定過程でどのように変化しているかを追跡する。
|