研究課題/領域番号 |
16K05817
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
安達 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80535245)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / アルブミン / ナノ粒子 / ポリオキソメタレート / センシング / 比色分析 / 吸着 / 分析化学 |
研究実績の概要 |
本年度(平成29年度)は、既存タンパク質計測法(Lowry法)の発色機構を参考にしたアルブミン化合物吸着に伴う酸化タングステン(WO3)表面増強フォトクロミズム、及び昨年度に引き続きアルブミンに選択的に結合する色素化合物に関する基礎的研究を推進した。具体的実施内容と成果は以下の通り。 (1)Lowry法をベースとしたWO3表面増強フォトクロミズムによるアルブミン化合物定量 昨年度完成させたサイズ制御WO3ナノコロイド粒子を用いて、アルブミン化合物の検出、定量を試みた。アルブミン化合物存在下、WO3ナノコロイド粒子のフォトクロミズム増強を確認したが、沈殿発生により再現性のある評価には至らなかった。しかし、系内にリンタングステン酸(PWA)を共存させることで、アルブミン/WO3ナノコロイド粒子の安定性が飛躍的に向上した。アルブミン/WO3/PWA系のフォトクロミック挙動は、アルブミン濃度に対して良い相関性を示した。これは、既存タンパク質計測法であるLowry法の発色メカニズムと類似すると推測される。アルブミン/WO3/PWA系の発色メカニズムの解明は最終年度の重要再検討課題である。 (2)アルブミン化合物に選択的結合する色素化合物の合成 本年度は、細胞染色など実績のあるキサンテン系色素に着目し、種々色素化合物の合成を試みた。合成した色素化合物とヒト血清アルブミン(HSA)との結合実験から定量的評価(結合サイト、結合定数)を行った。結果、HSAのサイト1に選択的包接結合する色素化合物を見出すことができた。しかし、キサンテン系色素/HAS包接錯体からの誘起円二色性(CD)シグナルの強度は弱く、CDシグナルから変性アルブミンと未変性アルブミンの識別には至っていない。最終年度も、種々色素化合物の検討を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルブミン化合物に対してセンシング能を有する種々WO3ナノコロイド粒子の合成し、PWA共存下において、フォトクロミズム増強が確認されたが、その化学的メカニズムは不明のままである。 種々キサンテン系色素化合物の合成を行ない、ヒト血清アルブミン(HSA)のサイト1に選択的包接結合する色素化合物を見出したが、現時点でキサンテン系色素/HSA包接錯体から誘起円二色性シグナルの強度はとても弱く、CDシグナルから変性アルブミンと未変性アルブミンの識別は難しい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成30年度)は、WO3ナノコロイド粒子表面に吸着したアルブミン化合物の定量的に評価、ならびに、更なるアルブミン化合物高感度センシング能を指向し、超音波を用いた表面修飾されたWO3ナノコロイド粒子合成法の開発に着手する。また、水溶液中におけるアルブミン化合物の自己集合挙動、そして、アルブミン/WO3/PWA系のフォトクロミズムメカニズムの解明についても定量的に調査する。 今年度に引き続き、アルブミン化合物に選択的結合する新規色素化合物の合成・評価も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた「アルブミン吸着表面増強フォトクロミズムの定量的理解」「アルブミン高感度検出用色素開発」に関して進捗が遅れている。 上記計画を達成すべく実験に使用する試薬・ガラス器具などの消耗品類費として、残予算を最終年度に計上する。
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