平成28~30年度にかけて、既存タンパク質計測法(Lowry法)の発色機構を参考にしたアルブミン化合物吸着に伴う酸化タングステン(WO3)表面増強フォトクロミズム、及びアルブミンに選択的に結合する色素化合物に関する基礎的研究を推進した。具体的実施内容と成果は以下の通り。 (1)Lowry法をベースとしたWO3表面増強フォトクロミズムによるアルブミン化合物定量 サイズ制御WO3ナノコロイド粒子を用いて、アルブミン化合物の検出、定量を試みた。アルブミン化合物存在下、WO3ナノコロイド粒子のフォトクロミズム増強を確認したが、沈殿発生により再現性のある評価には至らなかった。しかし、系内にリンタングステン酸(PWA)を共存させることで、アルブミン/WO3ナノコロイド粒子の安定性が飛躍的に向上した。アルブミン/WO3/PWA系のフォトクロミック挙動は、アルブミン濃度に対して良い相関性を示した。これは、既存タンパク質計測法であるLowry法の発色メカニズムと類似すると推測される。 (2)アルブミン化合物に選択的結合する色素化合物の合成 細胞染色など実績のあるキサンテン系色素に着目し、種々色素化合物の合成を試みた。合成した色素化合物とヒト血清アルブミン(HSA)との結合実験から定量的評価(結合サイト、結合定数)を行った。結果、HSAのサイト1に選択的包接結合する色素化合物を見出すことができた。
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