研究課題/領域番号 |
16K05818
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
薮谷 智規 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 教授 (80335786)
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研究分担者 |
山田 洋平 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 助教 (70706936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペルオキシ化合物 / 水酸化物共沈 / モリブデン / バナジウム / タングステン / 固相抽出 |
研究実績の概要 |
本年度は、複数の金属種を共沈殿した水酸化物固相からの溶出挙動の把握、廃棄物からのペルオキシ化合物を利用した金属溶離、高塩濃度溶液からの金属分析法の開発について実施した。 まず、モリブデン酸(VI)イオンを含むランタン水酸化物共沈殿に過酸化水素を添加した際の溶出状態の経時変化について調査した。過酸化水素水添加直後から数分間は溶液は淡赤色であるが、10分を経過したところで徐々に酸素発生が減少し、溶液色も薄くなった。酸素発生がほとんど無くなった15分経過時の溶液相について誘導結合プラズマ発光分析法によりモリブデン濃度を調査したところ、この溶液中からはモリブデンは検出されなかった。酸素発生量から溶液中の過酸化水素残存濃度を換算したところ、15分経過時には当初添加した過酸化水素はほぼ全量が分解し、過酸化水素は残存していなかった。このことから、モリブデン酸(VI)イオンは過酸化水素濃度に応じて溶液相とランタン水酸化物固相の間で可逆的に分配されることが判明した。 ペルオキシ化合物による廃棄物からの金属の溶出について検討を行った。タングステンとバナジウムが担持されたチタン酸化物脱硝触媒からのペルオキシ化合物(過炭酸ナトリウム(Na2CO3・H2O2)、過酸化水素水)による金属溶出について検討した。過炭酸ナトリウムは安価であり、過酸化水素と異なり固体かつ非劇物の試薬であることから、易取扱性の点からも産業利用上のメリットがある。その結果、炭酸ナトリウム水溶液及び過酸化水素水それぞれ単体で用いた場合と比較して、過炭酸ナトリウム水溶液はタングステンとバナジウムを効率的に溶出できることが判明した。 さらに、高塩濃度試料からの金属分離技術の開発を行ったところ、固相抽出を利用した銅化合物の高度な分離を可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の冒頭に計画したランタン共沈殿と過酸化水素水液相との金属の分配については、過酸化水素濃度に応じてモリブデン酸(VI)イオンが水酸化物固相と溶液相間を可逆的に移行する現象が確認出来るなど、当初計画通りに進展している。固相と液相の元素移行を可逆的に制御できることで、対象となるモリブデン、バナジウム、タングステンなどの精密な分離技術への応用が可能となる重要な知見である。 また、廃棄物からの金属の溶出についても、過炭酸ナトリウムのような非劇物かつ固体の試薬による効率的な溶離が達成されるなど、進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は事業最終年度で有り、29年度に確認された水酸化物固相と過酸化水素液相間での可逆的な分配挙動をさらに解析し、そのメカニズムと分離技術としての最適化を進める。また、モリブデン酸(VI)イオンだけでなくバナジン酸(V)イオン、タングステン酸(VI)イオンに対象を拡張して検討を行う。また、当初計画したフローや閉鎖系による金属回収システムの構築を進めるととともに、積極的な成果発表と論文作成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、旅費についてはパック旅費等の利用を進めて予定額より少なく推移したことと、他予算の執行の都合上で購入を予定していた物品を措置する必要がなくなるなどにより、経費の執行予定額が少なくなった。 30年度は上記の予算を執行するとともに、さらに成果報告のための旅費及び英文校閲等に積極的に支出する。
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