研究課題/領域番号 |
16K05825
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
須磨岡 淳 東京工科大学, 工学部, 教授 (10280934)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 転写因子 / 核酸 / ペプチド核酸 / DNA切断 / セリウム |
研究実績の概要 |
これまで,長鎖DANから所定のDNA断片を切り出す化学ツールとして,長鎖ターゲット配列へインベージョンする人工核酸であるpseudo-complementary peptide nucleic acid (pcPNA)と一本鎖特異的なDNA切断酵素(S1ヌクレアーゼなど)の組み合わせ,あるいはpcPNAと我々の見いだした一本鎖DNA切断触媒であるCe(IV)/EDTAの組み合わせのいずれかを用いてきた.しかし,本研究の転写因子関連タンパク質の解析目的には,その選択性や切断活性をさらにもう一段階向上させる必要があることが明らかとなってきた.そこで,本年度は切断選択性に大きく関与するpcPNAのDNAへのインベージョン挙動の解析,および,新たなDNA切断触媒の開発と中心として研究を進めてきた.その結果,これまでpcPNAの目的部位へのインベージョンを十分に行わせるために50℃で1時間程度インキュベーションを行っていたが,1.塩濃度などの条件を適切に選ぶことよって,より低温(37℃など)でインベージョン複合体形成が可能であること,さらに,2.ひとたびpcPNAがDNAにインベージョンすると,条件によっては複合体が比較的安定に存在することが明らかとなってきた.この結果は,ターゲット配列以外におけるS1ヌクレアーゼあるいはCe(IV)/EDTAによる切断を軽減できる可能性を示している.また,ある種のCe(IV)の酸化物ナノ粒子が,活性そのものは低いもののリン酸ジエステル結合切断活性を有することが明らかとなってきた.これは,ナノ粒子の特性や反応条件を最適化することにより,高いDNA切断活性を持つ触媒が開発できる可能性を示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の転写因子関連タンパク質の解析目的には,我々がこれまでに開発してきたDNA切断のための化学ツールの選択性や切断活性をさらにもう一段階向上させる必要があることが明らかとなってきたため,本年度はこの点を解決すべく研究を実施した.そのため,当初計画にあったアフニティー分離条件についての最適化に関して進捗にやや遅れた生じている.しかし,研究体制は徐々に整ってきており,今後十分な成果が得られると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
28年度に実施予定であったアフィティー分離条件についての最適化に関する検討の遅れを取り戻すべく,これらについては29年度早期に実施する.また,28年度に見い出した知見をさらに発展させ,より高選択的かつ高効率的なDNA断片の調製方法を開発する.また,当初計画に従い,タンパク質が固定化されたモデルDNA断片からの所定のDNA―タンパク質複合体の精製とその条件の最適化,分子クラウディングな環境におけるpcPNAのdouble-duplex invasion条件についての検討を行い,研究期間内に本研究課題で提案する化学ツールを用いた転写因子の新規解析手法の有用性を実証すること目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的には,我々がこれまでに開発してきたDNA切断のための化学ツールの選択性や切断活性をさらにもう一段階向上させる必要があることが明らかになってきたため,本年度はこの点を解決すべく研究を実施した.そのため,当初計画と比較して,特にアフィニティー分離の最適化に関する進捗にやや遅れが生じた.アフィニティー分離に使用するビーズやタンパク質は使用期限が設定されており,また高価であるため,事前に購入しておくよりも使用直前に購入する方が合理的であると考え,相当する額を次年度に繰り越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
アフィニティー分離の最適化に関する検討をできるだけ早期に実現すべく,条件が整い次第アフィニティービーズやタンパク質を早期に購入し研究を実施する予定である.
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