研究課題/領域番号 |
16K05826
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
佐々木 真一 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (50317294)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クロロフィル / 自己会合 / 近赤外 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
650nmを超える波長域に強いQy吸収帯を持つクロロフィル類は、近赤外(NIR)ウィンドウの活用に向けた機能性色素の基本骨格として有用である。今年度は、天然色素のクロロフィル-aを出発原料とし、クロリン環の3位または8位に様々な置換基を導入した誘導体を新規合成してその物性を評価するとともに、ペロブスカイト型太陽電池への応用も検討した。 3位にヒドロキシメチル基を持つ亜鉛クロリンの8位にパイ共役型置換基を導入した自己集積型色素を合成した。これらの機能性色素は界面活性剤(Triton X-100)を含む水溶液中で自己会合し、THF中におけるモノマー状態よりも長波長シフトした幅広い吸収スペクトルを示した。このミセル中での会合体の吸収は、緑色光合成細菌の光捕集アンテナのスペクトルと類似したものであり、近赤外光の吸収を可能とする。 一方、3位にパイ共役系拡張型の置換基を導入した誘導体では隣接する置換基との立体障害から、溶液中でNMRにより回転異性体が観測された。3位が特に嵩高いPh(2,3,4,5-Ph4)にした誘導体では、室温でアトロプアイソマーをHPLCにより分離することもできた。 3位にヒドロキシメチル基を持つ亜鉛クロリンは、特定の条件下でJ型会合体を形成しNIR領域へシフトした吸収スペクトルを示す。そこで、17位側鎖をかえた安定な自己会合型亜鉛クロリンを用いてスピンコーティングにより薄膜を形成させ、ペロブスカイト型太陽電池への応用を検討した。作製した薄膜はホール輸送材として良好な特性(光電変換効率11.4%)を示し、本太陽電池において従来の添加剤は不要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近赤外(NIR)領域に吸収を持つ新規なクロロフィル誘導体を設計し、その合成ルートを確立するとともに、光物性や自己会合能を詳細に検討して学術論文に報告することができた。 また機能性色素の応用例として、スピンコーティングによるJ型会合体の薄膜形成法を確立し、ペロブスカイト型太陽電池への応用に成功した。ホール輸送材としての性能は、従来の有機高分子(P3HT)よりも優れており、添加剤が不要という点でもメリットがある。このように、天然色素を原料とする機能性素材が開発でき、今後の環境調和型素子への発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
・バクテリオクロロフィル-aを原料とした新規色素を合成し、より長波長領域に発光極大をもつ機能性素材を開発する。 ・バイオセンシングへの応用を目的として、新しいタイプの生物発光基質を開発する。ウミシイタケの発光基質であるセレンテラジンと長波長発光を持つ蛍光色素を連結させたエネルギー移動型ルシフェリンを合成し、化学発光や生物発光特性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬類の価格変動により少額の残金(133円)が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費に合算して使用する。
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