研究課題/領域番号 |
16K05830
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
長坂 将成 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (90455212)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マイクロ流路 / 軟X線吸収分光法 / 赤外顕微鏡 / 溶液 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、軟X線を透過可能なマイクロ流路セルを実現することにより、マイクロ流路上での溶液反応を顕微XAS測定から調べることを目的とする。平成28年度までに、PDMS樹脂に0.05 mmの幅と深さのマイクロ流路を作製して、その外側に窒化シリコン膜(100 nm厚)を接着することで、軟X線吸収分光(XAS)測定を可能にするマイクロ流路セルを開発してきた。しかしながら、長時間測定を行うと、窓材が破損したり、流路が水圧で拡がったりする問題があった。 平成29年度は上述の問題を解決するために、マイクロ流路セルを改良した。まず、PDMS樹脂と窒化シリコン膜の接着圧が強いと、時間の経過と共に、窒化シリコン膜が破損することが分かった。そこで、窒化シリコン膜のサポート材の横に、テフロンのスペーサーを置くことで、窒化シリコン膜とPDMS樹脂の接着を、最適な圧力で長時間の変動がないようにすることに成功した。 マイクロ流路セルの評価を行うために、分子研UVSOR-IIIの赤外ビームラインBL6Bに設置された赤外顕微鏡を用いて、ピリジン―水混合系のT字型マイクロ流路の顕微赤外測定を行った。その結果、ピリジンと水の吸収強度から、混合部におけるピリジンと水の間の層流を確認した。 次にマイクロ流路セルを分子研UVSOR-IIIの軟X線ビームラインBL3Uにおいて、顕微XAS測定を行った。XAS測定は軟X線吸収後に発生する蛍光をシリコンドリフト検出器で測定することにより行った。これにより、ピリジン―水混合系に置いて、T字型マイクロ流路における層流をO-K吸収端の蛍光イメージから確認した。更に、N-K吸収端XAS測定から、層流近傍におけるピリジンと水の間の分子間相互作用を議論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ流路セルを長時間安定的に使用するために、PDMS樹脂と窒化シリコン膜の接着を安定的に行う技術開発に時間を要した。そのため、平成28年度は当初の計画以上に進展していたが、平成29年度の技術開発の時間を合わせると、当初の予定程度の進捗状況となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、開発したマイクロ流路セルを溶液混合系だけでなく、溶液反応系に展開することを目指す予定である。具体的には、2液混合により進行するルミノール反応の反応機構を顕微XAS測定から調べる予定である。ルミノール反応は、80度以上の高温が必要なため、温度制御機構を取り付ける予定である。また、反応条件の探索として、赤外顕微鏡を用いたマイクロ流路の赤外分光測定を行う予定である。反応条件が決まったら、その条件でルミノール反応の顕微XAS測定を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マイクロ流路セルの開発が順調に進んだため、消耗品が当初予定より少なくなったため。平成30年度は、溶液反応をマイクロ流路上で行うため、そのための消耗品代として使用する予定である。
|