本研究は物質に対して非接触で力学的影響を与えることのできる磁場の特徴を利用して、流体中で物質の挙動を制御する技術を研究し、分析技術や各種プロセスの高度化へつなげることを目指すものである。このために、高磁場中での流体挙動の可視化と流体挙動のシミュレーション、及び、空間磁場の最適化設計を行なうことで、高磁場を利用した弱磁性流体挙動の制御技術の確立を目指した。平成30年度は固液共存系での物質挙動のその場観察、無容器環境での流体挙動の詳細な観測、シミュレーション結果と実験との対比を重点的に行なった。期間を通して、流体挙動の可視化は屈折率の空間分布を利用するシャドウグラフ光学系とシュリーレン光学系を用いて行った。温度勾配が存在する条件下の導電性流体ではローレンツ力に起因した対流の抑制効果と磁気力の効果が重畳すること、空間磁場分布の選択によりそれらの寄与を分離して評価できること、プロセスの時間的な組み合わせにより、自在な制御が可能になることを見出した。また、固液が共存し濃度勾配が存在するケースでは磁気力の作用で流体挙動が影響されることがわかった。仏CNRSと共同で高磁気力環境下の無容器条件において流体挙動の高時間分解能光学的可視化および精密計測を行ない、その挙動について興味深い情報を得た。弱磁性流体の磁場中挙動のシミュレーションでは、モデルを構築し、単一液相系で温度勾配・濃度勾配が存在するケース、固液共存系における固液界面近傍での濃度勾配に着目したシミュレーションや、流体中に分散した固相粒子の挙動について空間磁場の設計を含めて評価するシミュレーションを実施した。実験で得られた結果と合わせ、流体や物質の分布、空間的な磁場分布や、それらの時間的な組み合わせを選択することで高磁場を利用した物質挙動の非接触制御法を設計できることを示すことができた。
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