研究実績の概要 |
マラリアは世界最大の感染症でありワクチン開発が強く求められている。我々は熱帯熱マラリア原虫エノラーゼの部分配列から設計したAD22ペプチドワクチンの臨床応用を指向した開発を進めてきた。本研究では、AD22ワクチンのユニークな作用機序解明を目的として、近年注目が集まっている病原体由来エノラーゼによるヒト線溶系活性化と宿主細胞への侵入促進機構を検証すべく、合成的な視点から研究を実施している。平成29年度は(1)複合体形成の結合定数測定(KD)、(2)プラスミン活性の反応速度論(S2251基質の加水分解パラメーターVmax, Km)について研究を行った。 (1)プラスミノーゲンとの結合に重要なエノラーゼ部分ペプチド(35残基)について、ELISA法により8-10残基配列まで絞り込みを行った。バイオレイヤー干渉法を用いて、35残基配列と10残基配列の結合解離速度を測定した。それぞれの解離定数はKD = 1.9×10-8 M, 3.6×10-8 Mと、何れも強い結合解離定数であるとわかった。 (2) 臨床検査で使用されるプラスミン特異的基質(S2251)を用いて、エノラーゼ部分ペプチドの添加によって発現するプラスミン活性測定(酵素反応速度)を行った。Lineweaver-Burk Plot による解析から、2種類のペプチド鎖(35残基, 10残基)の活性発現を比較すると、(a)ペプチド鎖はいずれも基質(S2251)と異なる部位へ相互作用してプラスミン活性が発現する;(b)基質の親和性には変化がない(Kmは変化しない);(c)加水分解反応に大きく影響する(Vmaxは35残基>>10残基)、と解釈することができた。 すなわち、エノラーゼ部分ペプチド35残基・10残基配列の結合解離速度は同じであるが、プラスミン活性化は大きく異なることが明らかとなった。
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