研究課題
好アルカリ性Nocardiopsis sp. F96株由来GH18キチナーゼChiF1はGH18触媒ドメイン(CatD)のみからなるシングルドメイン構造をとり,CatD 中にはキチナーゼ挿入ドメイン(CID)を含まない。一方で,F96株由来GH18キチナーゼChiF3はマルチドメイン構造をとり,キチン結合ドメイン(ChBD),フィブロネクチンタイプⅢ様ドメイン(FnIIID),および CIDを含むGH18 CatDから構成される。また,好アルカリBacillus sp. J813株由来 GH18キチナーゼChiJは,CIDを含むGH18 CatD,FnIIIDおよびChBDから構成される。これまでに,ChiF1,ChiF3およびChiJを基盤とするいくつかのキメラ酵素を調製し,それらの切断様式について予備的に検討を行ってきた。しかしながら,CID,ChBD および FnIIIDといった付加ドメインの役割については不明な点が多く残されていた。最終年度にあたる本年度は,ChiF1,ChiF3およびChiJを基盤とするキメラ酵素を網羅的に調製し,種々の基質に対する切断様式を詳細に検討した。キチンオリゴ糖 [(GlcNAc)6] およびp-ニトロフェニル化キチンオリゴ糖 [pNP-(GlcNAc)5] 基質を用いた検討の結果,CID の存在はエキソ型の切断やプロセッシビティの度合いを高めることが示唆された。一方で,可溶性キチン(グリコールキチン)基質の加水分解に及ぼすCID, ChBD および FnIIID の役割を普遍化するには至らなかった。さらに,ChiJ の ChBD および FnIIID は,ChiF1 および ChiJ の CatD の C 末端側に存在する場合に限り,不溶性キチンに対するエキソ型の切断やプロセッシビティの度合いを高める機能を有することが示唆された。
(2020年3月31日付の中村 聡の定年退職に伴い,当該ホームページは削除予定)
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