研究課題/領域番号 |
16K05840
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大窪 章寛 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (60376960)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | U1 snRNA / U11 snRNA / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
本研究課題では変異したスプライスサイトに相補的な配列をもつ人工UsnRNA(今回はU1snRNAやU11snRNA)を化学合成し細胞導入をおこなうことで、スプライシングを正常にもどすことを目的としている。 U1snRNAおよびU11snRNAは5'側のわずか8塩基を使ってイントロンとエキソンにまたがるスプライスサイトを認識する。そこで、本研究期間内にUsnRNAのこの部分に修飾を加え疾病原因遺伝子の塩基配列変異に対応させるほか、さらなるスプライスサイト認識や核酸分解酵素に対する耐性の向上をおこなっていく。 これまでに我々は「ホスホロアミダイト化合物を利用した高効率ポリリン酸化反応」を独自に開発し、m3Gキャップ構造を有するオリゴヌクレオチドの迅速かつ高効率な合成法を報告してきた。また、m3Gキャップ構造を有するU1 snRNAの5'側の短いRNA分子と3'側の長いRNA分子を別途合成し、T4DNA Ligaseを用いて連結することで、世界で初めてU1 snRNAの化学合成に成功している。しかし、3'側の長いRNA分子はT7RNAポリメーラーゼを用いた酵素合成で合成しているため、化学修飾基をUsnRNAに導入することが困難であった。そこで、平成28年度はUsnRNAを4つにわけてそれぞれを有機化学合成し、その後、それらすべてのRNAオリゴマーをT4DNA Ligase、もしくはT4RNA Ligase 2を用いて一気に酵素連結する方法の検討を詳細に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
U snRNA(U1 snRNAおよびU11 snRNA)を4つにわけたRNAオリゴマーをT4RNA Ligase 2を用いて酵素連結反応をおこなったところ、U snRNAの高次構造の影響によりその連結効率が非常に低く、目的のU snRNAを得る事ができなかった。そこで、この高次構造による影響を少なくするために、splint DNAとT4 DNA Ligaseを用いて上記RNAオリゴマーの酵素連結反応を行ったところ、効率良く目的のU snRNAの合成に成功した。また、この酵素連結反応において、RNAオリゴマーに種々の化学修飾を導入していても、その反応効率は変わらない事も確認している。 一方、U snRNAの高効率なドラッグデリバリーを目指し、本研究課題ではU snRNAのプロドラック化も行っていく。そのため、平成28年度は脂溶性の高いアシル基を有する環状RNAの効率合成法の確立を行い、現在、この環状RNAの核酸分解酵素耐性、ならびに細胞導入効率の測定を行っている。 以上、本研究は当初の計画通りに、順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度までに検討した合成法を用い修飾U snRNAを合成し、この修飾U snRNAによるスプライシングコレクションの検討を行う。CFTRイオンチャンネルのexon12のスプライスサイトが変異したmini geneを導入したHeLa細胞(嚢胞性線維症モデル細胞)に対し、変異したスプライスサイトと相補的になるように設計した修飾U1snRNAを細胞に、スプライシングの回復を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも、若干ではあるが研究が効率よく進み、予定していた複数の実験を省略する事ができたから。
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次年度使用額の使用計画 |
修飾核酸の細胞導入実験の回数を当初の計画より増やす事で、本研究の再現性向上につなげていく予定である。
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