研究実績の概要 |
これまでに、独自のヌンチャク型二量体を形成する新規人工タンパク質WA20を利用した蛋白質ナノブロックを開発し、6の倍数量体の多面体型複合体や鎖状複合体など、様々な多量体超分子ナノ構造複合体の構築に成功してきた。そこで、本研究では、WA20の安定化変異体の開発、温度変化によって可逆的に熱変性・再構成する蛋白質ナノブロックの開発、さらにサーマルサイクラーによる温度変化プログラミングにより逐次的に自己組織化させるための基盤的技術の開発を目的とした。これまでの研究により、変性中点温度が122℃にまで飛躍的に向上したWA20の超安定化変異体SUWA (Super WA20)の開発に成功し、最終年度に原著論文として発表した(Kimura et al, ACS Synth. Biol. 2020)。また、この超安定化変異体SUWAを利用して、温度変化によって可逆的に熱変性・再構成する蛋白質ナノブロックSUWA-foldonの開発にも成功し、サーマルサイクラーによる温度変化プログラミングにより、6量体または12量体の複合体再構成をコントロールできる可能性を見出した。これらの研究成果により、サーマルプログラミングによる蛋白質ナノブロックの自己組織化制御の基盤技術の開発に成功したと考えられる。 さらに、新たな蛋白質ナノブロックとして、SUWA-foldonに免疫グロブリン結合Zドメインを融合した蛋白質ナノブロックSUWA-foldon-Zを構築し、SUWA-foldon-Zは6量体、9量体、12量体、18量体等の複合体を形成することを明らかにした。また、これらの蛋白質ナノブロック複合体のクライオ電子顕微鏡観察条件を検討したところ、三角形状の粒子が多数観察された。低分解能であったため原子モデルの構築には至らなかったが、ドメイン配置を推定したところ、三角柱状複合体構造の18量体であることが示唆された。今後の研究の発展が期待される。
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