本研究の目的は、化学的構造が高度に制御された生理活性システインリッチタンパク質をペプチドライゲーション法を用いて迅速かつ 効率的に合成する方法論の開発およびそれらを用いたケミカルバイオロジー研究への応用である。タンパク質を化学合成することにより、化学修飾構造を精密に導入することが可能である。蛍光標識の導入などにより、生物活性の機構の解明に応用が可能である。 平成29年度はKAHAライゲーションとnative chemical ligation(NCL)の2種類のペプチドライゲーション反応を組み合わせて花粉管誘引因子であるCALL1タンパク質の化学全合成研究を行った。ペプチドライゲーションに必要なそれぞれのペプチド断片は、Fmoc固相ペプチド合成法によって合成した。NCLに必要なC末端チオエステルとして、C末端ヒドラジドを前駆体としてカルボン酸アジドを経由してチオエステルを生成した。またKAHAライゲーションに必要なヒドロキシアミンを備えたペプチド断片を合成した。その後の検討の結果、三成分を連結し、CALL1の全長タンパク質の合成を達成した。今後はリフォールディングによる活性型タンパク質への変換と生物活性の確認を行なう予定である。 また、EPF family タンパク質など、複数の生理活性システインリッチタンパク質の合成を達成することもできた。現在は蛍光標識体を合成中であり、生命科学者との共同研究により、その機能の解明研究に展開する予定である。
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