研究実績の概要 |
近年、タンパク質の化学合成は、様々なタンパク質誘導体が得られる方法となっている。しかし、現行の化学合成法では、機能性タンパク質の平均的なサイズである、150アミノ酸残基を超えるサイズのタンパク質合成は容易ではなく、標的分子のサイズと、合成スケールには大きな制限がある。本研究では、このようなタンパク質化学合成の根本的な問題を解決するべく、ペプチド連結反応であるネイティブケミカルライゲーション(NCL)反応を、複数別々の容器で実施した後、これらを精製作業なしに連続的に混ぜ合わせることで、一挙に全長ポリペプチド鎖をくみ上げる、収斂的ワンポットペプチド連結法を開発と、糖タンパク質合成への応用および結晶構造解析を目標としている。 初年度は、申請計画に基づき、収斂的ワンポットペプチド連結法の中心技術である、位置選択的NCL反応を可能にするi) ペプチドC末端の反応性制御を可能とするペプチドグアニジド体、およびii)ペプチドN末端の適切な保護基の探索を行った。この結果、i)に関しては、申請者が新規に見出したN-ピバロイルグアジン(PivGu)が、ペプチドC末端に縮合した、ペプチド-N-ピバロイルグアニジド(ペプチド-PivGu)体が、NCL反応中には不活性であるとともに、ワンポットで活性な状態であるチオエステル体へと変換できる事を見出した。一方、ii) については、既知の光官能性保護基である4-(dimethylamino)phenacyloxycarbonyl (Mapoc)基 (Tetrahedron Lett. 1998, 39, 4987, ChemBioChem 2005, 6, 1983)がペプチド-PivGu体と併用可能である事を見出した。これらの知見を元に、本研究の合成標的である、エリスロポエチンの一部の配列を利用において、位置選択的NCL反応が可能である事を見出した。
|