研究実績の概要 |
本年度は初年度に見出したペプチド-N-ピバロイルグアニジド(ペプチド-PivGu)体と,ペプチド連結反応であるネイティブケミカルライゲーション(NCL)を利用した,新規なワンポットペプチド連結反応の開発を行った.本検討では,合成標的である糖タンパク質,エリスロポエチン(EPO)のアミノ酸配列を利用した.166残基から成るEPOの全長ペプチド鎖は,6つのセグメント(N末端側よりseg1,2,3,4,5,6)として分割し,これらを原料としてワンポットペプチド連結反応の検討を行った.鍵物質となるペプチド-PivGu体については,申請者の確立した手法にて合成を行った(Okamoto, Chem. -Eur. J. 2017, 23, 9253.). まずN末端側の3セグメント(seg1,2,3)のワンポット連結反応の検討において,ペプチド-PivGuを利用した拡張型速度論的NCLの開発を行った.速度論的NCLは反応性の良いアリールチオエステルと,反応性の劣るアルキルチオエステルを併用する,既知の2セグメント位置選択的NCL反応である.これに対してさらに反応性の低いペプチド-PivGuを利用することで,3セグメントの位置選択的NCLを実現し,Seg1-Seg3に相当する67残基のペプチド-PivGuの合成に成功した.また得られたペプチドC末端のPivGu部分はチオエステルへと変換可能であり,さらなるNCLへ利用できることも確認された. 一方C末端に位置する3セグメント(seg4-6,計99残基)についても,ペプチド-PivGuを利用した効率的なワンポットNCLに成功した.以上よりタンパク質の全長を得るための新規収斂的ワンポットペプチド連結法の基盤をほぼ確立することができた.
|