研究実績の概要 |
本年度は昨年度までの成果で見出した、ペプチド-ピバロイルグアニジン(PivGu)体を鍵とする拡張型速度論的ネイティブケミカルライゲーション(NCL)を利用し、本研究課題の主眼であるタンパク質の収斂的ワンポット合成法の検討を行った。 まず、2年目までの成果に基づき、166残基から成るエリスロポエチン(EPO)全長ペプチド鎖を、6つのセグメント(N末端側よりseg1~6,それぞれ29、20、18、30、30、39残基)に分割し、このうちseg1-3、およびseg4-6を拡張型速度論的NCLによるワンポットでの連結を行った。続いて、得られたseg1-3(67残基)、seg4-6 (99残基)を、精製することなく混ぜ合わせる収斂的ワンポット連結反応を検討した。しかし、種々検討したところ、この反応系ではEPO全長鎖を効率よく生成することは困難であった。この主たる原因は、seg4-6のN末端Cys残基のもつアセタール保護の除去が問題であることが明らかとなった。そこで、seg4-6の合成と保護基の除去後精製を行い単品のseg4-6 を得た後、未精製のseg1-3とのワンポット連結反応を行った。この結果、目的とする166アミノ酸からなるEPO全長鎖の構築に成功した(論文準備中)。 また本研究の過程で、拡張型速度論的NCLにより化学合成ペプチドと小型タンパク質のもつそれぞれのN末端とC末端を相互に連結し、環状たんぱく質構造を構築できることを見出した。これにより、非天然型ペプチドを自在に土台たんぱく質に組み込むことが可能であり、新しい機能性タンパク質デザインへの利用が期待される(論文準備中)。以上より本研究で確立した拡張型速度論的NCLを鍵反応とすることで、150残基以上の天然型のタンパク質構造とともに、非天然型の環状タンパク質構造をワンポットで生成可能な収斂的合成基盤を確立するに至った。
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