これまで本研究では、入手容易な含フッ素ビルディングブロックとしてブロモフルオロ酢酸エチルを用いて、光学活性体なポイントフッ素化糖の合成を検討してきた。酵素による光学分割の段階でジアステレオ選択性も発現するため、アルトロース型ポイントフッ素化糖についてのみ、対応する光学活性体が得られていた。平成28年度(2016年度)は光学分割の際に生じるジアステレオ選択性を無くす条件を見出し、アルトロース型以外についてもポイントフッ素化糖を得るための手がかりを得た。さらに、平成29年度(2017年度)の検討によってポイントフッ素化糖の全収率が大幅に向上し、理論的に得られる4種類のポイントフッ素化糖について光学活性体合成の目途がついた。集中的に検討した向山アルドール反応ではルイス酸の種類や当量、温度の効果を詳細に調べ、これらの反応パラメータが収率や選択性に与える影響を明らかにした。また、反応メカニズムを推定するための情報も得られた。しかしながら、アロースについては満足する収率で向山アルドール反応の生成物が得られていなかった。そこで最終年度となる平成30年度(2018年度)はさらに反応剤の添加方法を検討することで、理論的に得られる4種類全てのポイントフッ素化糖を高い収率と選択性で得るための条件を探索した。種々検討の結果、最大収率47%(ジアステレオ選択性4:96)で目的の向山アルドール反応生成物が得られ、アロース型ポイントフッ素化糖の合成にも目途がついた。
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