研究課題/領域番号 |
16K05846
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小川 敦司 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (30442940)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | リボスイッチ / 発現制御 / IRES |
研究実績の概要 |
本研究では、cis作用型の分子応答性発現制御システム『リボスイッチ』に着目し、スイッチングに必要なエネルギーが軽減された「"省エネ型"真核リボスイッチ」を合理的に構築することを目的としている。具体的には、全研究機関の3年間で、「内部リボソーム進入部位(IRES)基盤の省エネ型真核リボスイッチ」および「3' cap非依存翻訳促進配列(3' CITE)基盤の省エネ型真核リボスイッチ」の創成を目指しており、1年目には、後者の合理設計に成功した。そこで、2年目の昨年度は、前者の合理構築に取り組んだ。 まず初めに、真核生物の無細胞翻訳系(コムギ胚芽抽出液)を用いて、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)IRESの翻訳機構を調査し、その機構用にmRNAを最適化した後、人工アプタマー(分子結合性RNA)の挿入位置を決定した。次に、この設計戦略に基づいて、テオフィリン結合アプタマーを挿入し、テオフィリン分子依存的に遺伝子発現が抑制されるOFFリボスイッチを構築した。作製したテオフィリン応答性OFFリボスイッチは、遺伝子配列に対して非依存的であることに加えて、スイッチング時に『鎖置換』を伴わないため、遺伝子やアプタマーを他のものと簡単に交換できる。実際に、テオフィリンアプタマーをFMN結合アプタマーや5-カルボキシテトラメチルローダミン結合アプタマーに置換するだけで、スイッチング効率を殆ど損なうことなく、分子特異性を変更することに成功した。これらの真核系人工OFFリボスイッチは、『鎖置換』のエネルギーロスを軽減できる点でも優れており、今後は、合成生物学等における基盤システムとして、種々の応用が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、全研究機関の3年間で、「内部リボソーム進入部位(IRES)基盤の省エネ型真核リボスイッチ」および「3' cap非依存翻訳促進配列(3' CITE)基盤の省エネ型真核リボスイッチ」の構築を目指していたが、2年間で達成したため。ただし、前者に関しては、ONリボスイッチの構築を計画していたのに対して、実際はOFFリボスイッチを作製した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に創製に成功したOFFリボスイッチは、省エネ型ではあるものの、IRESという大きなRNAの構造変化を必要とする。そこで本年度は、真核生物の通常翻訳機構を制御する省エネ型OFFリボスイッチの創製を目指す。また、高性能なリボスイッチを構築するために、mRNAの3'非翻訳領域配列を改良し、ON時の翻訳効率を上昇させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2年目の研究が当初計画よりスムーズに進捗したことで、3年目に行う研究の計画を少し変更した。それに伴い、3年目使用予定額が多くなることが予想されたため、2年目交付額の一部(15%程度)を次年度に繰り越すことを決定した。繰り越した研究費は主に消耗品費として使用する予定である。
|