本研究では、cis作用型の分子応答性発現制御システム『リボスイッチ』に着目し、スイッチングに必要なエネルギーが軽減された「"省エネ型"真核リボスイッチ」を合理的に構築することを目的とした。当初は、全研究期間の3年間で、「内部リボソーム進入部位(IRES)基盤の省エネ型真核リボスイッチ」および「3'cap非依存翻訳促進配列(3'CITE)基盤の省エネ型真核リボスイッチ」の創成を目指していたが、最初の2年間で首尾よく双方の合理設計に成功した。また、3年目には、上記2種のリボスイッチで起こるような大きな構造変化を必要としない「通常翻訳を制御する省エネ型真核リボスイッチ」の合理的構築を達成した。このように、当初の計画以上に研究が進展したものの、研究途中に着想したサブテーマである「リボスイッチ性能を向上させるための3'非翻訳領域配列の改良」に研究余地が残っていたため、昨年度は、期間を延長して当該テーマに取り組んだ。 具体的には、真核生物翻訳系におけるRNAの安定性を高めるための末端保護配列を、in vitro selection法によって選抜した。小麦胚芽抽出液中における安定性を調査した結果、保護配列を持たないRNAは1時間以内に迅速に分解したのに対して、選抜した保護配列を有するRNAは24時間以上安定に存在した。また、当該保護配列をmRNAの末端に付加したところ、翻訳効率が5倍程度上昇した。さらに、当該保護配列を有効に利用するために、通常翻訳よりも高効率な翻訳を可能にする内部リボソーム進入部位配列を同定した。これらの翻訳促進配列を上手く活用することで、本研究で構築した一連のリボスイッチの性能向上が期待される。
|