研究課題
本研究は、PやSbなどの高原子価金属ポルフィリン錯体の軸配位子を修飾することで、両親媒性光増感剤(PS)を合成し、軸配位子の構造と菌体に対する集積性との関係を明らかにし、菌体の光不活性化(PDI)活性の向上を目的としている。最終年度は、大腸菌に対するPDIについて、軸配位アルキルピリジニウム基を導入したP錯体(P型)の最適化を検討した。また、酵母菌を標的としたグルコース型P錯体の合成とその集積性を検討した。さらに、P-ポルフィリン錯体への水素添加によってP-クロリン錯体へ変換した。一方、PSと菌体の細胞膜との相互作用を明らかにするため、モデル系であるリン脂質リポソームに対する吸着挙動を調べた。期間全体として、以下の成果が得られた。(i)非病原性の大腸菌をグラム陰性菌のモデルとし、PDI活性に対するP型錯体へのアルキル基導入効果を調べ、アルキル基の最適化に成功した。また、P型錯体をヒト血清アルブミンと複合化させることで、酵母菌に対するPDI活性が向上した。一方、ヘパリンとの複合化ではPDI活性が大きく抑制され、PDI後に不必要となったPSの除去方法を提案した。(ii)生体組織に干渉されない可視光域に吸収帯を有するPSとして、P-水素化ポルフィリン錯体を提案し、P-ポルフィリン錯体への水素添加による変化方法の確立を目指した。光安定性と長波長可視光照射での一重項酸素生成能を評価した結果、P-イソバクテリオクロリン錯体が有力な発色団であることを見出した。この様に、P錯体の誘導化の簡便性を生かしたPSの最適化によってPDI活性を向上させるとともに、新規発色団への変換方法の提案を行った。薬剤耐性菌の出現で問題となっている抗生物質に代わる新たな感染症治療法としてのPDIについて、P-ポルフィリン錯体類は有力なPSの候補であることを提案できたものと考えられ、意義深い成果が得られた。
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Medicinal Chemistry Research
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