ミトコンドリアや葉緑体といったオルガネラを生み出した細胞内共生は、細胞の中に細胞が共生することにより新たな機能と構造を獲得する機会を生物にもたらす細胞進化の大きな原動力となっている。真核細胞の進化過程を解き明かす上で、細胞共生がどのように成立し、維持されているのかを分子レベルで詳細に理解することが求められる。ミドリゾウリムシとクロレラの共生メカニズムの解析の先行研究から酸化還元や抗酸化に関わるタンパク質の活性中心となる金属元素が、細胞内共生成立過程において細胞内で重要な役割を果たしているものと推測される。そこで本研究では、先端的多元素同時マイクロイメージング質量顕微鏡法による細胞内元素マッピング解析技術基盤を構築することを目指した。平成30年度は、前年度までに構築した細胞内元素マッピング解析のための、高分解能レーザーアブレーション(LA)装置と誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を組み合わせたmicroLA-ICP-MSシステムを活用して細胞内の主要元素を測定する際の、レーザーアブレーション用の専用試料台表面への細胞の整列化技術について検討した。従来、細胞を試料台に細胞を積載すると、無秩序に固定化されるため、連続して細胞を自動分析することが困難であった。そこで、多数の細胞を1細胞ずつに分画、整列させる新規なマイクロデバイスを新規に作製し、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いてマイクロデバイス上に配列させた細胞試料中の多元素同時検出を試みた。清浄なシリコンウェハー上にリゾグラフィ技術により細胞をトラップする微細構造を構築し、専用アプリケーターを用いることで細胞を試料台上に効率よく整列させることに成功した。本研究により考案した細胞捕捉デバイスとその応用質量分析技術について、特許として出願した。
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