研究課題/領域番号 |
16K05853
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齋藤 義雄 日本大学, 工学部, 准教授 (40385985)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛍光核酸 / SNPs / プローブ |
研究実績の概要 |
実用に耐えうる、誰もが簡単に行なえる遺伝子診断法を確立するためには、誰にでも簡単に使える一塩基多型 (SNPs, Single Nucleotide Polymorphisms) 識別プローブの開発が重要となる。本研究では、極性、粘性、pHなどの周辺のミクロ環境変化に応じて蛍光強度や蛍光発光波長を鋭敏に変化させる環境感応型蛍光核酸塩基を開発し、標的DNAやRNAとハイブリダイズした際のマッチ-ミスマッチの違いによるミクロ環境変化を蛍光波長(色)の変化で検出するという全く新しい概念を用いた新規蛍光プローブの開発を行っている。 本年度は、環境感応型蛍光核酸塩基として新たにデザインした2種類の発光モードを示す環境感応型蛍光核酸塩基の開発を行っている。まず初めに、分子内にドナー・アクセプター構造を有する蛍光核酸塩基(モノマー分子)をデザインし、それらを実際に合成、評価する必要があるが、本年度は、これらの分子のデザインと、実際の合成を中心に研究を推進してきた。 数種類の蛍光ヌクレオシドを実際に合成し、光学特性等を評価したところ、いくつかの化合物で、当初目指した性質に近い分子を得ることができた。しかしながら、蛍光波長などが当初考えていたよりも若干短く、オリゴヌクレオチドに導入した際にも十分な塩基識別能が得られなかったため、未だ改良する余地が残っている。さらに、実際にいく種類かの蛍光核酸塩基を合成していく過程で、優れた光学特性を有する分子を得るための改良点なども浮き彫りになってきた。実際、興味深い光学特性を有する分子も得られた。そのため、年度の後半では、年度の前半で得られた結果を基に、新たに分子デザインを行い、新分子の合成を精力的に行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の前半には、環境感応型蛍光核酸塩基の候補となる新しい分子のデザインを行い、それを基に実際の分子の合成を進めてきた。早いものでは、平成28年度の前半の段階で合成を完了できたものもあり、それらに関しては、光学特性の評価を行い改良点を見出すための知見を得ることができた。実際にそこで得られた知見、結果をフィードバックし、次の分子設計および合成に役立てることができており、これらを繰り返すことで、合目的の分子を得るために必要な分子の特徴などががわかり始めてきているところである。また、いくつかの分子に関しては、実際にオリゴヌクレオチド鎖に導入することにも成功しており、オリゴヌクレオチドレベルでの評価も行うことができた。(ただし、現在までのところ合目的なプローブは得られていない。)オリゴヌクレオチド鎖での塩基識別能を評価することで、モノマーレベルでの光学特性の評価では分からなかった問題点も知ることができ、それらの結果を組み込んだ上での新たなモノマー分子のデザインに取り組むこともできている。 いく種類かの蛍光核酸塩基を合成していく過程で、興味深い光学特性を有する分子も得られており、現在も新たな分子の合成を精力的に進めている。 そのため、研究は申請書の計画と同様に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に行った研究の過程で、興味深い光学特性を有する分子も得られており、本年度も昨年度と同様に精力的にモノマー分子のデザインと合成を行う必要があると考えている。また、同様に昨年度得られた結果から分子を改良するために必要な新たな知見も得られ始めている。そのため、本年度から新たに研究分担者として加わったグループと連携し、今まで以上に精力的に分子のデザインと合成を行って行く予定である。モノマー分子が得られ次第、それらの光学特性を評価し、問題点を洗い出して、より優れた分子の設計へとつなげて行き、これらを繰り返すことで、目的に近い分子をなるべく早い段階で得たいと考えている。 また、平成28年度までの研究で、実際にいくつかの蛍光ヌクレオシドを得ることに成功している。平成29年度は、平成28年度までに得られた2種類の発光モードを示す環境感応型蛍光核酸塩基を様々なオリゴヌクレオチド配列に導入して、DNAプローブとしての性能評価を行う予定である。実際にオリゴヌクレオチド鎖が得られたら、それらの光学特性および塩基識別能の評価を迅速に行い、問題点等があれば、結果をさらにフィードバックして、合目的のプローブが得られるように検討を進めて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究において、あらたに優れた特性を有するモノマー分子が得られ、そのため当初の計画よりモノマー分子の合成に力を入れて研究を行った。そのため、合成試薬がより高価であるDNA合成が相対的に減り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画より精力的に、モノマー分子を合成しており、平成29年度は、当初計画通りに進められると考えている。平成28年度に行う予定であったDNA合成も、本年度に行う予定であるため、その際に次年度使用額分を使用する予定である。
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