研究課題/領域番号 |
16K05854
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
富崎 欣也 龍谷大学, 理工学部, 教授 (90397026)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペプチド / 金ナノロッド / 自己集合化 |
研究実績の概要 |
本研究では、フォトサーマル療法を指向して生体適合生の高いペプチドを用いて金ナノロッドを合成する技術開発を行うものである 。これまでに、RU006というアミノ酸9残基からなるペプチドの自己集合体を鋳型として用いると、リボン状金ナノ結晶が得られることがわかっている。 2016年度は、RU006が集合体を形成する際に駆動力となる水素結合を阻害をすることで、リボン状の金ナノ粒子形態を短くしてロッド状へと近づけることができると考え、水素結合形成のためのアミドプロトンをもたないN-メチルアミノ酸の導入を試みたところ、比較的短いリボン状金ナノ結晶の合成が確認された。そこで、2017年度は、種々の形態を有する金ナノ結晶を得ることを目的として、金ナノロッド合成において鋳型として一般的に使用される毒性のCTABの分子構造を模倣して、CTABと分子鎖長の等しいウンデカノイルアルギニンアミド(undec-Arg-NH2)およびオクタノイルグリシルアルギニンアミド(oct-Gly-Arg-NH2)を設計・合成し、塩化金酸および還元剤と混合することで金ナノ結晶の合成を試みた。その結果、undec-Arg-NH2を鋳型にして塩化金酸をアスコルビン酸で還元したところ、球状金ナノ粒子が多数凝集した形態がみられた。反応液にAgNO3を加えて同様の実験を行うと10 nm程度の異方的な金ナノ粒子が多数凝集した形態がみられた。oct-Gly-Arg-NH2を鋳型として用いた場合でもundec-Arg-NH2と同じ傾向にあった。以上より、一般的に用いられている毒性のCTABの分子構造を模倣して設計した界面活性剤様ペプチドはAgNO3存在下において異方的な金ナノ粒子合成の鋳型となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、2016年度の研究成果を基に、金ナノロッド合成において鋳型として一般的に使用される毒性のCTABの分子構造を模倣して界面活性剤様ペプチドの設計・合成・金ナノ結晶合成鋳型としての効果を評価した。本研究課題の最終目標への道半ばであるが、生態的合成の高い界面活性剤様ペプチドによる金ナノ結晶鋳型効果を明らかにした。本研究成果は、集合体内部鋳型における異方的金ナノ結晶生成メカニズムを原理とするワンポット金ナノ結晶合成法開発へ繋がると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、これまでの研究成果を基に、界面活性剤様ペプチドと細胞毒性を有するCTABの混合比を変化させることで、生成する金ナノ結晶形態と細胞毒性の関係について検討するとともに、より細胞毒性の低い鋳型分子設計原理の理解に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を年度末まで効率的に実施できるように、ペプチドの純度検定や精製に使用する高速液体クロマトグラフ用の交換部品費や溶離液費として残しておいたが、既に購入済みの消耗品で賄うことができた。残金については、2018年度の研究内容がより進展するように、消耗品等に計上する。
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