研究課題/領域番号 |
16K05856
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
北松 瑞生 近畿大学, 理工学部, 講師 (60379716)
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研究分担者 |
道上 宏之 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20572499)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペプチド / 細胞内運搬ペプチド / タンパク質 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
我々は所定の位置に負電荷と正電荷を有するロイシンジッパーモチーフ(それぞれLz(E)とLz(K))を「分子のり」として用いてタンパク質や機能性ペプチドと細胞内運搬ペプチドとを連結させることで新しい細胞内運搬法(ドラッグデリバリーシステム)を開発したいと考えている。細胞内運搬ペプチドを用いた一般的な方法では、タンパク質や機能性ペプチドは、細胞内運搬ペプチドと直接連結しているため、細胞内にこれらが送達された後、細胞内運搬ペプチドによる細胞内物質との非特異的結合が送達されたタンパク質らに悪影響を与えることが懸念される。しかし、本細胞内運搬法では細胞内でタンパク質らと細胞内運搬ペプチドとが分離することが期待できる。 今年度我々は、負電荷を有するロイシンジッパー、Lz(E)に11個の連続したアルギニンをもつオリゴアルギニン(細胞内運搬ペプチド)、11Rを修飾したペプチド、Lz(E)-11Rを合成した。合成されたペプチドはHPLCおよび質量分析計により同定された。また、正電荷を有するロイシンジッパー、Lz(K)をC末端に持つNanogタンパク質、Nanog-Lz(K)も合成した。このタンパク質はゲル電気泳動法や塩基配列の解析により同定された。 これらのペプチドおよびタンパク質を細胞培養液中で混合し、細胞を培養したところ、タンパク質がペプチドとLzを介して連結し、タンパク質が細胞内に運搬されたことを、抗Nanog抗体の染色により確認することができた。また、Nanog-Lz(K)は細胞の核にまで送達されていることも確認できた。我々はさらにNanogタンパク質によって発現が抑制されるRnd3タンパク質を指標として本システム(タンパク質-Lz(K)とLz(E)-細胞内運搬ペプチドによる細胞内送達)の効果を評価した。RT-PCRの結果より、本システムにより核にまで送達されたNanogが有意にその効果を発揮したことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度研究実施計画でNanogタンパク質の核輸送を目標としていたが、今年度予定通りに達成できた。ただし、その効率についてはまだ改善の余地があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画はおおむね順調であるので、来年度は他のタンパク質について検討を行ないたい。また本システムの発展形の一つとしてペプチド核酸による同じシステムの構築を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質の合成においてコントロール実験などが本年度内に完了できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度に上記のタンパク質のコントロール実験を行なう。
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