研究課題/領域番号 |
16K05860
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井村 知弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (10371022)
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研究分担者 |
保坂 俊彰 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (40462725)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノディスク / 膜タンパク質 / 両親媒性ペプチド / 界面活性剤 / 可溶化 |
研究実績の概要 |
ペプファクタント(PF)とは、ペプチドの機能性と界面活性を併せ持つ新しい生体由来の機能性素材である。本年度は、動的光散乱法(DLS)やサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用するとともに、ナノディスク形成に用いる合成ペプファクタントとリン脂質の種類や組成を最適化することによって、ナノディスクの粒子径を幅広い範囲で自在に制御することに成功した。 また、ペプファクタントの長さやリン脂質の分子占有面積を用いて、得られるナノディスクの詳細な構造について検証したところ、当該ナノディスクはBelt-likeモデルで形成していることが示唆された。これを利用して、昨年度までにナノディスク中への内包に成功した単量体の膜タンパク質(Acetabularia rhodopsinⅡ:ARⅡ)ばかりでなく、無細胞合成法により得られた5量体の膜タンパク質(Proteorhodopsin:PR)を一段階で内包可能であることを実証した。 また、紫外・可視吸収スペクトル(UV-VIS)等により内包されたARⅡやPRの活性がナノディスクの膜環境中で維持されていることを明らかにした。より効率的にARⅡやPRがナノディスクに内包できるように、ペプファクタントやナノディスクの構造の最適化を試みるとともに、ARⅡやPRよりも透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することが容易なAcrBなどの異なる膜タンパク質を用いた検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Belt-likeモデルを用いたナノディスクの構造の検証や幅広い範囲におけるナノディスクの粒子径の制御を行うことができ、これを利用して通常は困難な5量体の膜タンパク質(Proteorhodopsin:PR)を一段階で内包することが比較的スムーズにできた。
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今後の研究の推進方策 |
ARⅡやPRよりも透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することが容易なAcrBなどの異なる膜タンパク質を用いた検討を推進する。特に、AcrBを内包したナノディスクは現状で安定性に課題があるため、これを克服して透過型電子顕微鏡(TEM)によりナノディスクのみならず、これに内包された膜タンパク質の観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ARⅡやPRのナノディスクへの内包が当初の予定よりも順調に進み、ペプファクタントの合成に関する使用額が少なくなった。使用計画については、AcrBを内包したナノディスクの安定性に関する課題を解決し、TEM観察など膜タンパク質の評価を行うために使用する。
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