研究課題/領域番号 |
16K05861
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松浦 俊一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 主任研究員 (80443224)
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研究分担者 |
馬場 知哉 国立遺伝学研究所, 先端ゲノミクス推進センター, 特任准教授 (00338196)
池田 拓史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 主任研究員 (60371019)
山本 勝俊 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (60343042)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNAポリメラーゼ / メソポーラスシリカ / 固定化酵素 / DNA増幅 / 1分子PCR / ナノ空間 / 反応制御 / 多孔質材料 |
研究実績の概要 |
遺伝子の精密診断では、極微量DNAの増幅法の開発が求められるが、従来法では標的DNAの選択的増幅が非特異的バックグラウンド増幅により阻害される点に課題があった。本研究では、この課題解決に向け、各種ナノ空間材料へのDNA増幅酵素の固定化による反応制御技術の開発を行った。 当年度は、4種類のナノ空間材料(MCM型メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボン、高Al含有メソ多孔体(C16-meso)、両親媒性有機-無機ハイブリッド多孔体(KCS-2))に固定化したDNAポリメラーゼ(KOD)を用いて、数十分子のDNAからの増幅(PCR法)を試みた。その結果、メソポーラスシリカを用いた場合のみ、標的DNAの特異的な増幅が認められ、その他の材料では反応阻害の傾向が示された。その理由としては、メソポーラスカーボン等の材料には反応液中の核酸(基質DNA、プライマー等)は吸着せずに酵素を選択的に吸着可能であったが、酵素の吸着時に酵素活性が低下することが推察された。 そこで、酵素の吸着メカニズムの解明の一環として、固体核磁気共鳴(SS-NMR)および示唆熱・熱重量(TG-DTA)測定装置を用いて、2種類のメソポーラスシリカ(FSMおよびSBA型)、また、KODを固定化したシリカの局所構造を詳細に解析し,表面(細孔内壁面)組成を推定した。その結果、メソポーラスシリカの種類によってシリカ表面近傍の吸着水の分布や末端シラノール基(Si-OH)の分布に違いが見られ、表面親水性に違いがあることが判明した。さらに興味深いことに、PCR用Tris緩衝液で処理したサンプルでは表面末端の隣接するシラノール基同士が縮合していることが判明した。このことは、緩衝液の影響によってシリカの表面性状がより疎水的に変化することを意味する。 以上の結果より、PCR法においてはシリカ細孔が酵素の安定な固定化場および反応場として好適であり、また、緩衝液の作用による表面性状の変化が酵素の固定化状態や反応性に影響することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当年度は、酵素の固定化支持体として用いる各種のナノ空間材料の準備などに時間を要したため、当初計画していた全ての実験項目について検討することはできなかった。しかし、PCR用DNA増幅酵素(KOD)を対象にした反応評価では、メソポーラスシリカの細孔径を精密に制御することによって極微量のDNAからの増幅が可能になることを見出し、また、その再現性を確保することができた。 さらに、これまで未検証であった、各種分析装置を用いた酵素-ナノ空間材料複合体の測定により材料表面の性状などについて詳細に調べ、新たな知見を得ることができた。 以上のことより、当初の計画では予想できなかった新たな知見も踏まえて次年度の展開を検討していく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当年度に実施できなかった実験項目を含め、交付申請書に記載の平成29年度以降の実施計画に沿って研究を推進する。 具体的な推進方策としては、当年度に得られたPCR法での研究成果を基に、等温DNA増幅反応用の鎖置換型DNAポリメラーゼ(Bst DNAポリメラーゼ等)の各種ナノ空間材料への固定化状態の評価について検証する。 また、ここで得られたDNAポリメラーゼ-ナノ空間材料複合体を等温DNA増幅反応(LAMP法等)に適用し、1分子レベルの極微量DNAからの増幅反応を実現可能にするためのナノ空間材料の表面組成等の最適化を図る。 特に緩衝液による表面構造の変化はこれまで想定されていなかった事実であり、酵素固定化に非常に重要な影響を与えることから、固体NMR等の分光学的手法を活用して、支持体として用いるナノ空間材料の細孔表面の緩衝液による変化を明らかにし、酵素反応に好適な固定化条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度にDNA増幅産物の解析装置(100万円相当)の導入を予定していたが、研究代表者の所属機関が所有する同様の装置を利用可能となったため、新規に装置を購入することを変更し、実験に必要な試薬・消耗品の購入を中心として進めた。また、当初計画で予定されていた環境微生物からのゲノムDNAの抽出操作および反応解析に着手できず、これらを実施するための研究分担金の未使用分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現段階では、初年度に使用を予定していた等温DNA増幅反応用の鎖置換型DNAポリメラーゼ(Bst DNAポリメラーゼ等)の試薬類の準備が遅れており、次年度は主に、上記の酵素やゲノムDNAの抽出に関わる試薬等の消耗品費に充当する計画である。また、これまでに得られた知見をまとめ、研究成果の発表(学術論文および学会発表)を行うための論文投稿費、学会登録費、国内旅費等に研究費を充てる予定である。
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