熱硬化性フェノール樹脂を構成素材とし、高い耐熱・断熱性と優れた機械的強度を有している発泡フェノール樹脂材料は、その高い物理的・化学的安定性のため、廃棄された後の再利用法は確立されていない。本研究では、従来の高温熱分解法よりも比較的温和な条件での液相処理を試み、発泡フェノール樹脂の大量再資源化への基礎的知見を得た。 発泡フェノール樹脂からなる廃建材部材を粉末化し、(1)熱的性質と非溶媒存在下での物理安定性を明らかにし、(2)ソックスレー抽出や高温流体を用いた溶剤処理を行い、可塑剤等の添加物の抽出条件を明らかにした。さらに(3)従来法である400℃前後の熱分解反応に加え、炭素―炭素共有結合の開裂(分解反応)が起こりにくい350℃までの比較的温和な条件での反応における溶剤効果を明らかにし、250℃程度の温度でも可溶化が進行することが明らかにした。さらに(4)ラジカルを安定化できるような水素供与性溶剤を用いた反応においては、明確な水素供与反応は確認できず、また脂肪族アルコール中の反応において最適な炭素鎖の長さが確認された。これらの比較的低い反応温度における分解反応は、溶剤による加溶媒分解反応の進行を示唆していることが明らかになった。(5)アルコール類を用いた温和な条件における架橋結合の切断機構を明らかにするため、フェノール樹脂中に含まれると考えられる架橋結合と同様な結合を有するモデル化合物について検討を行い、反応温度等の条件設定が重要であることが明らかになった。(6)モデル化合物の反応結果から、ヘテロ原子を含む架橋結合が切断され、その安定化にアルコール化合物が関与していることが明らかになった。これらから、発泡フェノール樹脂の分解反応におけるアルコール化合物の物理的・化学的な役割が明らかになり、温和な条件での資源化の可能性が明瞭になった。
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