本研究では、三種類のイオン液体を媒質として、均一系における電荷を有する金属錯体(亜鉛―TPP錯体とコバルトセプルクレート錯体)間の電子移動反応を直接観測した。アセトニトリル中における交差反応速度定数と既に報告されているコバルトセプルクレート錯体の自己交換速度定数から、亜鉛-TPP錯体の自己交換反応における内圏活性化エネルギーを見積もった。内圏活性化エネルギーが溶媒の種類に依存しないことを利用して、Ratner-Levinの交差関係式を駆使して三種類のコバルト錯体の自己交換反応における外圏活性化エネルギーを計算し、バルクイオン液体のPekar因子と比較したところ、Fawcettらによる報告と同じ順番で速度定数が変化することがわかった。この結果は、電荷を有する錯イオンの周りでは「イオン液体は電極近傍におけるイオン液体と同様に解離しており、陽イオンコンポーネントと陰イオンコンポーネントが独立して緩和している」ことを示している。 我々の測定成果は(1)2013年のIsraelachviliの研究結果と電気化学的挙動の観測結果が一致しているのみならず、 (2)イオン液体中の電子移動反応に際してバルクにおけるイオン液体の誘電体としての挙動(Pekar因子)が2011のFawcettによる電極近傍における電子移動で観測された溶媒挙動と一致していることを示しており、これら(1)、(2)は(a)バルクイオン液体が荷電錯イオンの周りで解離しているのみならず、電子移動の活性化過程に際してその誘電挙動が解離したイオン液体に対応するPekar因子と仮定したときにのみ実験結果が再現できることを示している。
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