研究課題/領域番号 |
16K05866
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
畑 俊充 京都大学, 生存圏研究所, 講師 (10243099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CO2吸蔵 / 木質 / ミクロ孔 / パルス通電加熱法 / タマネギ状炭素粒体 |
研究実績の概要 |
本研究は、大気圧下で二酸化炭素を吸蔵・回収することによって、二酸化炭素排出削減を通して地球温暖化問題の解決に資する木質系炭素材料を開発することを目的とする。H28年度は、木質系多孔質炭素のCO2吸蔵能に対する炭素構造の影響を調べ、効率的にCO2を吸蔵する多孔質炭素を合成する条件を検討した。炭素前駆体の樹種、金属錯体、あるいは酸性官能基の種類を変え多孔質炭素を調製し、得られた多孔質炭素のCO2吸着量に対する炭素の空隙構造が及ぼす影響を、小角X線散乱と透過電子顕微鏡を用いて調べた。 酸性官能基を導入した炭素前駆体を作製するために300℃処理で得られた木質熱処理物に、Na 、Fe2+、あるいはFe3+を木質炭素中に分散させた。次にパルス通電加熱法により、20℃/minの昇温速度、真空雰囲気下において600℃で炭素前駆体の熱処理を行った。熱処理によって得られた多孔質炭素のCO2吸着量を測定し、小角X線散乱を用いて多孔質炭素の空隙構造を調べるとともに、その組織構造を透過電子顕微鏡により観察した。 CO2吸着測定で得られたデータをHorvath-Kawazoe法 (HK法)によって解析したところ、化学処理方法に関わらず空隙直径のピークは約0.65nmであった。HRTEMを用いて観察したところ、アルカリ処理以外のサンプルにおいてタマネギ状炭素粒体が観察され、Fe2+と Fe3+錯体から得られたサンプルのタマネギ状炭素粒体は大きさがそろっていた。Fe2+錯体を炭化したトドマツにおいて、最も高いCO2吸着量(100kPa5おいて5.6mmol/g)を得た。以下、CO2吸着量が大きい順に、Fe3+錯体を炭化したトドマツ、化学処理なしのトドマツ炭化物、の順となった。上記の結果になったのは、炭素前駆体中の錯体金属や化学処理の違いにより多孔質炭素の空隙構造が変化したためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的としている、ナノシェル炭素構造を内部に持つ二酸化炭素吸着剤の開発に成功したため。また、バイオマスとフェノールとの複合化技術開発のために必要な、空隙構造を解析するための下記の三つの手法を確立し、これらの三つの解析結果から、空隙構造を多面的に調べ、多孔質炭素の空隙構造の制御方法を開発することが可能となったため: ① 多孔質炭素のCO2吸着量を測定によって得られた吸着等温線に対し、Horvath-Kawazoe法 (HK法)を用いて空孔径分布の解析方法 ② 小角X線散乱を用いて得られた散乱光強度の分布極性に対し、モデルフリーの解析方法を適用することによる空孔径分布の定量化法 ③ 多孔質炭素の空隙構造のHRTEMによって得られたイメージ図から空孔径のピークスペクトルを得るための画像解析手法
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今後の研究の推進方策 |
フェノール樹脂とバイオマスとの加熱処理により、分子篩層複合ナノシェル構造炭素を形成し、ミクロ孔の制御と比表面積の極大化を実現するため、次の三つの検討を行う: 1. フェノール樹脂とメラミン添加、加熱処理を経て、分子篩層複合ナノシェル構造炭素を形成 2. フェノール樹脂の調製において乳化重合法や懸濁重合法で適切な薬剤を用い、賦活化と同様の効果を得る技術開発 3. 原材料と調製方法の選択により、フェノールから高い比表面積をもつ炭化物を設計
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際共同研究の相手先研究機関への出張が、相手方の都合により取りやめとなったため
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次年度使用額の使用計画 |
国際学術誌への投稿を予定しており、打ち合わせ旅費のために使用する予定
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