CO2は、温室効果ガスの中で、地球温暖化に最も大きな影響を与えるため、地球温暖化防止の観点から、CO2を吸蔵する材料の開発は世界的な課題となっている。本研究は、大気圧下でCO2を吸蔵・回収することによって、地球温暖化問題の解決に資する木質系炭素材料を開発することを目的とする。そのため、KOHとK2CO3の混合比率を変えフェノール樹脂の賦活処理により活性炭を作成した。CO2吸着測定と透過電子顕微鏡(TEM)観察結果からその微細空隙構造を解析し、CO2吸着量に対する影響を調べた。さらにセルロースナノファイバー(CNF)とフェノール樹脂という異なるミクロ空隙の組み合わせにより得られた炭素化物のCO2吸着量を調べ合成法の最適化を試みた。 フェノール樹脂・CNF複合炭素前駆体中に水酸化カリウム、あるいはCNFを添加し、KOH水溶液、およびK2CO3溶液を種々の重量比で混合し、賦活処理を行った。こうして得られた複合炭素材料についてガス吸着による空孔径分布の解析と TEMを用いた観察、および空隙構造の解析を行った。 いずれのサンプルも4.5-5mmol/gという比較的高いCO2吸着量を示した。K2CO3が多くても少なくてもCO2吸着量が低下したことから、K2CO3の添加量に最適値が存在することがわかった。CNF:KOH:K2CO3を10:7:3の比率で混合して得られた活性炭の炭素六角網面の間隔の強度分布を調べた。炭素六角網面の間隔は0.4-1nmの範囲にあり、CO2吸着等温線のDFT解析結果で得られた空孔径分布のピークと比較して若干大きいものの、両者は類似の傾向を示した。TEMによる画像解析では炭素結晶の格子面と空隙の濃淡差で分布を示すため、このような差となったと考えられる。解析の結果、CO2を効率的に吸着するためにウルトラミクロ孔への移動経路を確保することが重要であることがわかった。
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