本年度は、Candida boidinii K212株がもつキシロース発酵遺伝子の発現および発酵能の向上を行った。そのために、実験室酵母であるBY4741株に獲得したXYLA遺伝子、XYLB遺伝子、さらにGXT1遺伝子を導入し、そのキシロース発酵能を評価した。しかしながら、20 g/Lのキシロースを半分まで(約8g/L)まで資化したものの、エタノールは生成されず、その分キシリトールが3 g/Lまで生成された。キシリトールの生成はBY4741株がもつアルドラーゼによって生成されたものだと思われる。キシロースがキシリトールに変換されたきっかけはGXT1の導入によりキシロースが多く細胞内に取り込まれたことである。GXT1トランスポーターはHXT7に比べて活性が高いと判った。GXT1のタンパク構造(推測モデルにより)からHXT7と比較した際に、438位のフェニルアラニンがトランスポーターの空洞の中心に存在し、オープン構造になっているため、キシロースが撮りやすい構造になっている。こうしてGXT1の使用はキシロール取り込み能の向上に有効な方法であることが判った。しかし、現状のXYLAの活性は非常に弱いのが確実なので、その改善方法としてK212株のゲノム上から他のキシロース発酵に起用する遺伝子の追加探索を行った。そこで、K212株には意外に従来のNADPHをキシロース還元酵素遺伝子(XR)およびキシリトール脱水素酵素遺伝子(XDH)を有していることが判った。そのXRとXDHは両方ともNADP(H)を補酵素因子として優先的に利用しており、NADP(H)のリサイクルにより今まで問題になっている酸化還元の不均等を解消できると期待している。そこで、K212株由来のXRおよびXDHをクローニングして、BY4741株のゲノムに導入したところ、得られた組換え株はキシロース発酵ができるようになった。
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