フコイダンの主構成単糖であるフコースの一部水酸基はアセチル化されている。つまり、フコイダンはグリコシド(アセタール)結合とエステル結合の両方を有する多糖と言える。そこで、アセタール基とエステル基の水熱処理及び酸処理による加水分解性の相違についてフコイダンをモデル分子として検討を行った。 フコイダンの水熱処理は硫酸基の脱離が生じない120℃の条件で行った。酸処理は水熱処理による分子量低下速度と同程度となるように反応時間を調整した。アセタール基の加水分解性はGPCによる分子量減少挙動により評価し、エステル基の加水分解性は1H-NMRスペクトルにおけるアセチル基(2.1-2.2ppm)のピーク面積変化により評価した。なお、アセチル基のピーク面積は加水分解を受けないフコースの5位メチル基のピーク面積との比により評価した。 その結果、水熱処理と酸処理のいずれにおいてもフコイダンの分子量は反応時間に対応して320kDaから数千Daまで低下することが確認できたが、アセチル基のピーク比は酸処理では0.23から0.07まで反応時間により著しく低下したのに対し、水熱処理ではピーク面積比は0.2とほぼ一定であり、エステル基の加水分解は観察されなかった。 この結果より、アセタールは水熱処理及び酸処理により加水分解を受けるが、エステル基は水熱処理では加水分解されず保持されることが明らかとなり、水熱処理により官能基選択的に加水分解反応を制御できることを示している。
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