研究課題/領域番号 |
16K05871
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
鈴鹿 俊雅 琉球大学, 理学部, 准教授 (00468068)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グリーンケミストリー / 触媒・化学プロセス / 環境化学 / ナノ材料 / 二酸化炭素排出削減 |
研究実績の概要 |
有機金属触媒を用いた炭素ー炭素、炭素ー窒素、炭素ー酸素結合形成反応は広く研究され、現在、有機合成を行う上で欠かせない手法である。また、水中系での結合形成反応もグリーンケミストリーの観点から開発の期待が急速に高まってきている。 これらの反応は、ハロゲン化アリールと有機金属試薬とを用いたカップリング反応により実現されており、基質より生成したハロゲン化物イオンが反応排水を汚染してしまう問題がある。また、水中にはCO2が容易に溶存でき、炭酸塩として存在しているが、現状の水中系での反応の開発においては、この資源をうまく活用できていない。 そこで本課題では、1)擬ハロゲン化物を用いた反応を開発する、2)水中溶存CO2を原料とする有機変換反応の開発を検討することで環境調和型反応の構築を目指し研究を行った。 両親媒性の反応歯としてポリスチレンポリエチレングリコール共重合高分子レジンに着目し、同レジン上に新しく調整した有機反応を司るパラジウム錯体を固定化し、また、一方で、同レジン上に同レジン上にエチレンイミンとビオチン誘導体をCO2固定化部位として導入した固体触媒の合成と同定を行った。次に、その固体触媒を用いて、水中に溶存するCO2の変換反応を試みたが、目的とするメタノールの生成は24時間の反応でごくわずかしか得られなかった。より高活性な触媒を求め、金属を白金、ニッケルなどに代えて反応を行ったが収率の改善はほとんど見られなかった。一方で、擬ハロゲン化物を用いた炭素ー炭素結合形成反応では、前年10%程度しか得られなかった目的物が40%程度得られるようになり進展がみられた。また、本研究の中で、見つかった新規の反応であるアジ化物を用いたone-potでの触媒的アミド化反応は、ハロゲン化アリールだけでなく、他の基質に対しても反応が進行することを見出し、現在、発展させているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画したCO2固定化触媒の合成、擬ハロゲン化物を用いたカップリング反応、スルホキソニウム塩を用いたカップリング反応、幾つかの貴金属を用いた固体触媒の合成を全て検討することができた。また、炭酸塩を用いた高圧下でのメタノール合成も実施検討することができた。また、当初計画していなかった、アジ化物を用いた完全水柱系でのカップリング反応も試みることができ、その結果、触媒的アミド化反応の開発につなかった。これは、新しいタイプの反応でありるため、基質適応性も評価し、Sp2炭素だけでなく、Sp3炭素でも適応できることが明らかとなった。研究目的である環境調和型の反応系の開発という観点から、上記の達成度と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、水中機能性触媒の開発、特に中心金属の検討を行いつつ、ジアゾ化物、アジ化物、スルホキソニウム塩、炭酸塩などの水系メディアでの反応において効率的にえると考えられる基質の検討を行い、変換効率の向上を目指した。いずれの結果においても、今後、されに高効率化が必要である。 1)炭素塩やCO2を用いた反応においては、高圧で反応をおこなったが目的とするメタノールがあまり生成しないため、島嶼の計画とおり高温または低温での反応の検討を実施していく予定である。 2)ジアゾニウム塩の反応にかんしては、昨年より4倍の反応効率の改善がみられたので、若干の効率化を検討したのち、得られた知見をまとめて論文を投稿する予定である。 3)スルホキソニウム塩かんしては、スルホキソニウム塩の開発から見直し、他のヘテロ原子を用いたイリドの検討を行う予定である。 4)アジ化物を用いた触媒的アミド化反応は、当初の課題では想定していなかった新しい反応なので、引き続き、基質の適応範囲、反応条件の適応範囲などを検討して発展させていきたいと考えている。 また、当初、初年度に導入した低温反応装置が予定より安価に入手できたために、次年度に予算をくりこしている。繰り越した予算は、消耗品の購入などに充てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初、初年度に導入を計画した低温反応装置が予定していた購入機種の変更などにより安価に入手できたために、次年度以降に残予算を繰り越した。 (使用計画) 繰り越した予算は、物品費、旅費、人件費、その他に割り振り計画的に執行する予定である。
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