研究課題/領域番号 |
16K05873
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
田代 雄彦 関東学院大学, 総合研究推進機構, 准教授 (70727536)
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研究分担者 |
梅田 泰 関東学院大学, 総合研究推進機構, 助教 (70772086)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウルトラファインバブル / 低濃度オゾン / 環境配慮型 / 表面改質法 / クロムフリー |
研究実績の概要 |
先ず、PI樹脂に本処理を適用すると多数の針状突起が発現する。この発現メカニズムの解析を種々試みたが、解明は難しかった。恐らく、バブルが弾ける時に発生する熱により、PIが溶解しミルククラウン現象の様に針状突起が生成したと考えている。 次に、現在検討中のファインバブル低濃度オゾン水製造装置は,加圧溶解法と気液二相流旋回法の両法を併用しファインバブルを生成する。特にバブル径を微小化するのは後者のチューブ長であり、7.5~50 mまで五水準変化(標準20 m)可能な付属装置を設計・製造した。それぞれのマイクロバブル及びウルトラファインバブル径を測定したが、システムに組み込まれた“バブル除去棟”の効果が絶大で、マイクロバブルは30-70個/mL程度であり、ほとんどが中心径90 nm程度のウルトラファインバブルが約30000000個/mLであった。また、ウルトラファインバブル径は殆ど変化無かった。このことはバブルがある程度の大きさになるとクラスターとして存在し、解析装置的にはバブル径が変化していないように見える可能性を示唆している。 ABS樹脂に対し、本法の処理時間は30分が最適であり、本処理によりABS樹脂自体の表面硬度が増加し,同時に最表面に官能基を発現する。後続のアルカリ処理で強親水基も発現し,触媒吸着量が増加することで,めっきはスムースに反応し完全成膜に至る。 最適処理で機械的な強度を示す改質層の厚さは400 nm,組成的に変化した改質層は800 nmであった。本処理中、ABS樹脂のB成分が優先的に溶出し、多数の溶出孔が形成され、最大の表面粗さを示す。この溶出孔周辺でNiPめっきとABS樹脂間にサブミクロンオーダーのアンカー効果が発現する。また、ASマトリックス部分とNiPめっき界面にナノレベルのアンカー効果を同時に発現することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、最近話題のファインバブルと低濃度(0.3-2.0㎎/L)のオゾン水を融合した新規のめっき前処理技術(Fblow処理と呼称)の研究基盤の確立である。本研究では、最適なバブル径およびオゾン濃度を明らかにし、現状使用されている有害な6価クロム(発癌性物質)を含むエッチング液の代替技術とする。具体的な研究内容は、①オゾン濃度の最適化、②バブル径の最適化、③密着メカニズムの解析、④各種プラスチックにマッチングする前処理技術の確立、である。 「研究実績の概要」で述べた通り、平成29年度までに①オゾン濃度は1.5~2.0 mg/Lが最適であり、②バブル径は90 nm程度で、現製造装置のパフォーマンスで充分であると考えられる。また、装置稼働時のアイドリング時間は30分で、オゾン濃度は安定化することが分かった。③汎用のABS樹脂の密着メカニズムの解析は完了した。 次に、処理水のリサイクル化は未実施であるが、新建浴から6ヶ月は問題無く使用できることを確認している。そこで、処理水の連続あるいは間欠のろ過、処理水の活性炭ろ過や処理水のオゾン処理(有機物や残留オゾンの分解)を導入することにより、リサイクル化も出来るため、サスティナブルケミストリーのエッチング法を達成可能と考える。 ④各種プラスチックにマッチングする前処理技術の確立であるが、ABS樹脂で現状のクロム酸エッチングと同等の密着強度は得られているが、TEMの断面観察よりサブミクロンオーダーのB成分の溶出孔にめっきがより充填されれば、更に密着強度は改善され、信頼性の向上につながると考えられるので、触媒付与方法の検討を行う。さらに、Fblow処理水のpH により、密着強度を改善出来ることが分かったので、最終年度はこれらの詳細な検討を行う予定である。以上のことから(2)を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方法(平成30年度)は、先ず、処理水の連続あるいは間欠のろ過、処理水の活性炭ろ過、処理水のオゾン処理(有機物や残留オゾンの分解)を行うことにより、処理水のリサイクル化の可否(処理水のライフ)を判断する。また、密着強度の改善及び信頼性の向上につなげるため、触媒付与方法の検討を行う。 次に、Fblow処理水のpHの影響を評価し、最終的にめっき前処理工程の短縮化を検討する。 当初は「④各種プラスチックにマッチングする前処理技術の確立」をあげたが、様々な因子が増えたため、研究計画を変更し、汎用プラスチックのABS樹脂に特化し、上記の検討を優先することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプルの表面形態観察に必要なFE-SEM装置の修理費用(145,611円)、ウルトラファインバブル製造装置の消耗品である「PVC発生ノズル筒」 (外注品)の納入が遅れ、年度末の学会費用も平成29年度分に計上出来なかった。これらの支払合計額は327,031円で、実質2,315円の赤字になった。 すべて3月中に納品は完了しているが、支払いの関係で2018年度執行となる。
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