研究課題/領域番号 |
16K05874
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
北岡 賢 近畿大学, 工学部, 講師 (50457602)
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研究分担者 |
信岡 かおる 大分大学, 工学部, 准教授 (10398258)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン液体 / ポルフィリン / グリーンケミストリー |
研究実績の概要 |
当該年度は、①イオン液体中および②ハロゲン溶媒との二相系を活用したTPPの金属錯化手法の確立を目指した研究を展開した。①として、はじめに、通常TPPの金属錯体化に用いられるDMSOを溶媒とした反応と比較した。DMSO中ではTPP-Cu(Ⅱ)が67%の収率で得られたのに対し、[C8mim][Br]中でTPP-Cu(Ⅱ)が79%の収率で得られた。DMSOの場合、金属塩を溶解するのに12 mLの溶媒が必要であったのに対し、[C8mim][Br] 中では、1.5 mLでTPP、金属塩ともに溶解し、溶媒の使用量を大幅に減少させることがわかった。また、[C8mim][Br] の構造を基本として、[Cnmim][Br](n=2-10)中で金属錯体化を行うことで、イオン液体のアルキル鎖長の効果を調査した。その結果、 [C8mim][Br]中でTPP-Cu(Ⅱ)が79%の収率で得られた。[Cnmim][Br]は全て親水性であるが、アルキル鎖長が長い程 (n = 2→8) 極性が低下し、TPPの溶媒和が向上し、収率が向上したと考えられる。②としては、イオン液体とハロゲン溶媒との二相系でTPPの金属錯体化を行なうことを目的としている。二相系で反応を行う狙いは、TPPの溶解性の高いハロゲン溶媒と金属塩の溶解性の高いイオン液体を用いることで、より効果的な反応と分離・精製の効率化にある。最初にハロゲン溶媒と相分離するイオン液体構造の探索を行った。ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンをハロゲン溶媒として選択し、様々なアニオン種、カチオン骨格を有するイオン液体とハロゲン溶媒との相分離性を調査した。結果としては、カチオン側鎖に水酸基を有する[C2-OHmim][Br]が1,2-ジクロロエタンと相分離することが明らかとなった。アルキル鎖の短さ、ブロマイドアニオン、水酸基の親水性の高さがハロゲン溶媒との相分離に重要であったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、①イオン液体中および②ハロゲン溶媒との二相系を活用したTPPの金属錯化手法の確立を目指した研究を展開した。①イオン液体中においてTPPの銅(Ⅱ)錯体化が効果的に進むことが明らかとなった。また、TPPの金属錯体化においては、金属塩とTPPの溶解性の高さが重要であることを明らかとしており、特に、TPPの溶解性を向上させるため、極性がある程度低い[C8mim][Br]が最適であることを特定している。②ハロゲン溶媒/イオン液体の二相系反応においても、ハロゲン溶媒と相分離するイオン液体構造の特定に成功しており、概ね当初の計画通り研究は進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
28年度までに、TPPの金属錯体化の手法に関する研究に着手し、ノウハウや知見が得られてきている。今後は、それら知見を活かし、NCPの金属錯体化や互変異性制御に関する研究を展開していきたいと考えている。特に、ポルフィリン類化合物を溶解しやすいイオン液体構造が分かってきたので、今後の実験も円滑に進められると考えている。互変異性制御の研究では、ポルフィリン化合物の会合が重要であると考えられ、吸収スペクトルや蛍光スペクトルを駆使した手法により解明していく計画である。
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